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【17話】幼なじみエリート上司と一途で秘密な両想い

作品詳細

「隼人って、結構強引な性格なんだって、今さらながら気づいたわ」
 床に落ちていた服を拾い上げ、着替えをする。同じくシャツのボタンを締めている隼人が、ニッとした顔で私を見た。
「佳穂だからだよ。ちょっと意地悪したら、反応可愛いし。なんだかんだで、素直に応じるし」
「そ、それは、隼人の期待に少しでも応えたいなって思ったから」
 照れくささも加わって、ついムキになってしまう。そんな私を、隼人はクスクスと笑った。
「そういうとこが、可愛いって言ってるんだよ。せっかくの休みだし、どこか行こうか?」
 隼人は私の額にキスを落とすと、玄関に向かって歩いていく。彼を追いかけるように小走りでついていった。
「でも、誰かに見られたら、よくないんじゃないの?」
 私たちの交際は、周りには秘密なのだから。プライベートで一緒のところを見られたら、疑われるにきまっている。
 すると、立ち止まった隼人は、一瞬考えるように腕を組んだ。
「とはいっても、いつも家の中っていうのもな。じゃあ、人が来ない場所に行ってみようか?」
 振り返った隼人は、私の様子を窺うように見る。彼の言葉の意味がいまいち理解できなくて、首をかしげた。
「人が来ない場所なんてあるの?」
「あるよ。俺の家の別荘。行ってみる?」
 あっさりと言われて、驚きで呆然とする。まさか、別荘まで持っているなんて知らなかった。
「でも、ご両親のものなんでしょう? 勝手に使ってもいいの?」
 そういう問題でもないと思いながら、隼人に尋ねてみる。すると、彼は大きく頷いた。
「親父たちはアメリカにいるんだから、使うことがないんだ。それに、半分は俺名義だから、使用する権利はある」
「半分は隼人の名義!?」
 それにも驚くと、隼人はしかめっ面をした。
「どうするんだ? 行くか、行かないかはっきりしろって」
「い、行かせてもらいます」
 そう答えると、隼人は小さな笑みを見せた。
「じゃあ、自分の着替えを準備して。今夜は、そこへ泊まろう」
 隼人の申し出に、また私はあ然としてしまった──。

 着替えの準備を済ませると、隼人と家を出る。服が入ったスポーツバッグは、彼が持ってくれた。
「本当に、別荘に泊まるの? ちょっと、緊張しちゃう」
「大丈夫だよ。近くにはレストランもあるし、ケータリングもできるから、ゆっくり過ごそう」
「う、うん……」
 エレベーターを下りて駐車場へ向かっていると、場違いな高級車が目に止まった。
 国内メーカーの高級車で、シルバーのスポーツカータイプ。このマンションは、一人暮らしばかりだから、車を持っていない人も多いし、バイクや軽自動車がメインだ。
 その中で、この車はとても目立っている。いったい、誰の車だろうと思っていると、隼人がキーをかざして鍵を開けた。
「この車、隼人のものなの?」
 目を丸くして言うと、隼人はごく普通に頷いた。
「そうだけど。どうかした?」
「どうかしたって、この車かなり高級車じゃない? それも、左ハンドル……」
 近づくと、車のボディの艶も分かる。丁寧に乗られているようだった。
「このメーカーの車が好みでさ。アメリカではずっと左ハンドルだっただろ? その癖が抜けなくて、日本でもこの仕様にしてる」
 そう言いながら、隼人は助手席を開けてくれた。本来なら、ここが運転席になるのだから、変な感じ。
 車の中は、芳香剤のいい匂いがする。安物の香りというより、品のある爽やかな匂いだ。
 隼人は運転席に乗り込むと、さっそくエンジンをかける。荷物は後部座席に置かれていて、ふと気づいた。
「そういえば、隼人の荷物は? 取りに帰る?」
「ああ、大丈夫。別荘に置いてあるのがあるから」
 車を走らせ始めた隼人は、なんだか楽しそう。驚きの連続の私とは大違いだ。
「別荘って、隼人はそんなに行ってるの? 着替えがあるくらいだから……」
「違うよ。帰国したときに、置いてきただけ。仕事疲れのとき、あそこを訪れるとホッとするんだよな」
 しみじみと言う彼を見つめながら、そんな大切な場所に連れていってもらえることを嬉しく感じる。
「ありがとう。隼人……」
 ポツリと呟くと、ハンドルを握っている隼人が一瞬私を見た。
「なにが?」
「別荘に連れていってくれること。息抜きができる場所に、私を連れていってくれるんだもん。本当にいいの?」
 助手席からは、隼人の横顔しか見えない。だけど、小さく微笑んでくれているのが分かった。

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