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【15話】幼なじみエリート上司と一途で秘密な両想い

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「たしかに、そうよね。私たち、もうとっくに大人になってるってことね」
 思い出が止まったままだからか、まだどこか中学生のときの感覚から抜け切れていない部分もある。
 でももう私たちは、あの頃とは違う。自分たちの意志で、しっかりと歩ける大人になったんだ。
「そういうこと。もう、俺たちは大人なんだ。だから、俺は佳穂に、大人の男としての愛情表現をしていく」
 唇にキスを落とされ目を閉じる。いつの間にか、隼人は私に覆い被さっていた。
「ん……。もう、服を着ちゃったよ」
 繰り返されるキスに心地よさを感じていると、隼人が服の上から指でなぞってくる。
 時折小さく反応していると、彼が当たり前のように言った。
「じゃあ、もう一回脱ごうか?」
 隼人はそう言い終わると同時に、私のシャツのボタンを一つずつ外していった──。

「ん……。なんだか、明るい……」
 私の部屋って、こんなに日当たりがよかったっけ? 寝ぼけた頭でそんなことを考えながら目を開けると、目の前に隼人の寝顔がある。
 一気に眠気は飛んでいき、代わりに照れくささが込み上げてきた。だって、昨夜は隼人と、ここで甘い夜を過ごしたから。
 体に鈍い痛みを感じるのは、それだけ彼に抱かれた証拠。記憶が蘇ってきて、一人ドキドキしていた。
「どうしよう……。隼人、まだ寝てるよね」
 サイドテーブルに置いたスマホに手を伸ばし、時間を確認するともう十一時になっている。
 着替えもないし、早めに帰らなくちゃ。でも、隼人を起こすのは気が引ける。
 きっと、異動してきたばかりで疲れが溜まっているはず。せっかくの休日なのだから、このまま寝かせてあげよう。
「じゃあね、隼人。また、月曜日に」
 寝顔の彼にそっと囁くと、身なりを整え隼人の部屋をあとにした。

 電車を使い、自宅へ戻ったのが十二時半頃。シャワーを浴びて着替え終えたタイミングで、電話が鳴った。
 それは隼人からで、心を躍らせながら取る。すると、開口一番、彼の怒った声が聞こえてきた。
『佳穂、お前今どこにいるの?』
「え? どこって、家だけど。どうしたの? なんだか怒ってない?」
 寝起きは不機嫌になるタイプなのか、太くて低い声に戸惑いを覚える。
『怒るだろ、普通。なんで、黙って帰ったんだよ』
 そう言われ、メモの一つも残していなかったことに気づいた。せめて、メールでも入れておけばよかったとすぐに反省する。
 きっと隼人は、私がどこに行ったのか心配をしたんだ。
「ごめんね、隼人。起こしたら悪いと思って、黙って帰ったの。メモくらい、置いておくべきだったね」
『あのな、そういうことじゃないんだよ』
 素直に謝ったというのに、なにをぷりぷり怒っているのか。そういえば隼人は子供の頃から、話が噛み合わないとイライラしていたっけ。今も、彼の言いたいことを、私が理解していないのかもしれない。
「どうしたの? なにか、他に気に障ることがあった?」
『本当に、佳穂の天然さは変わってないな。今日も明日も、仕事が休みだろ? 月曜日まで、俺と会わないつもりだった?』
 最後のほうはトーンが落ちていき、隼人の小さなため息が聞こえる。そのとき、ようやく彼の言いたいことが分かった。
「ごめん……。そうだよね。私ってば、なんだか夢心地な気分だったから、気が回ってなかったみたい」
 隼人と想いが通じ合えたこと、キスができたこと、体を重ね合えたこと。それらが全部嬉しくて幸せで、一人で余韻に浸っていた。
『俺は、今日も明日も、佳穂に会いたい。今から、そっちに行く。家を教えて』
「えっ!? 今から?」
『そうだよ。それとも、俺が行っちゃマズイことでもある?』
「そんなことないって。ただ、まだ寝起きでしょ? 大丈夫? ゆっくりしてからでもいいのに」
 それか、私からまた隼人のマンションへ向かおうか。そんなことも考えていると、すぐに隼人が返してきた。
『佳穂に会いたい。だから、早く場所を教えろ』
 隼人の凄みに負けて、自宅の住所を伝えると電話はすぐに切れた。本当に、今から来るつもりなんだ。そこまで、私に会いたいと思ってくれるなんて、とても嬉しい。
 車でも、ここまで一時間はかかるから、それまでに部屋を片付けておこう。
 まさか自分の部屋に、隼人を招くことになるなんて、少し前の私が聞いたら、驚いてひっくり返るだろうな。
 クスッと笑いながら掃除機をかける。窓から見える空は、今日も雲一つなく澄み渡っている。

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