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【9話】お見合い相手はスパダリ系ドクターでした!

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 部屋についても、手は握られたままだった。
 教えてあげると言われて、流されるままにホテルのロビーへ向かうエレベーターに乗ってしまったけれど、やや早過ぎる展開に考えがまとまらない。
 お見合いをしたその日に、さっき屋上から見た景色と同じ風景をホテルの部屋の窓から見ている。
 ここは断るべきかとか、返事はしていないけど一応付きあってることになるのなら問題ないのかな、と様々な考えが巡る。
 それに〝教えてあげる〟その意味を考えあぐねている。
 どうやって?
 つまり、これから相野谷さんとエッチするってことかな?
 いくら考えたって、誰も答えを教えてくれるはずもない。
 でも、会ったばかりの人なのに、どうしてか緊張の中にほんの少しの期待が混じる。
「千加って呼んでいい?」
 ベッドに座らされて、心臓がうるさいぐらいに鼓動を奏でる。
 やっぱり、やっぱり怖い。
 喘ぎ声が変とか思われたりしたら、相野谷さんが気持ちよくなってくれなかったら、期待と不安が交互に押し寄せて私の身体は強張った。
「千加?」
「あ、あの……やっぱり、こういうことは……結婚してから……」
 結局不安が勝ってしまった。
 部屋を取らせてここまで来ておきながら、口からでた言葉は最低だ。
 流されやすい自分の性格がイヤになる。
 相野谷さんが隣に座って、私の肩を優しく抱いた。大丈夫だよと労わるような手つきだったけど、身体の強張りは解けない。
「それなら、最後まではしないよ。でも……」
 トンと軽く身体を押されて、ベッドに押し倒された。
 イヤだとどうして言えないの。
 本当にイヤなのかと自問自答すれば、どっちなのかよくわからない。
「キミをイカせることができたら……俺と付きあってくれる?」
 形のいい唇が降りてきて、私は自然に目を瞑った。
 まるで、キスされるのを待っていたみたいに。
 私、相野谷さんとキスしてみたかったのかな。
 触れるだけのキスが何度も繰り返された。
 相野谷さんの舌が私の唇をなぞる。唇の周りが濡らされて、甘噛みされた。
 湿った舌が歯茎にあたる。
「ふっ……ん」
 甘ったるい声が塞がれた唇の隙間から漏れた。
 気持ちいい。
 修ちゃんとしかしたことがないけど、たぶん……相野谷さんはキスが上手い。
 舌が絡め取られて音を立てて吸われただけなのに、私の身体にジンと痺れるような感覚が起きる。
 口の中で混ざり合って溢れでた唾液が、顎を伝って流れ落ちる。
 いつもなら、痛みを散らす方法を考えているところだ。シーツのシワを見たり、天井の模様を見たり。
 でも、今の私はそんなこと考える余裕もなかった。
「あ、いのや……さっ……」
 息継ぎするのすら忘れて、ドンと肩を叩くと数センチの隙間を空けるように唇が離された。大きく息を吸い込んだのを確認したのか、再びねっとりと甘いキスが繰り返される。
「ん、ん……っ」
 苦しげな呼吸をしていると、私を落ち着かせるようにトンと鼻頭に指が触れた。
 どうやら鼻で息をしろということらしい。
 慣れてるとは言い難いが、ファーストキスでもないのに。
 まったく、余裕のない自分がおかしい。
 絡む舌の動きに合わせて、鼻から息を吸い込んだ。
 少しだけ落ち着いてきたからか、苦しさはもうない。
 それでも火照った身体は収まらず中心が熱を帯びていく。
 めまいが起きるほどの酩酊感に、キスってこんなに気持ちよかったんだと知った。
 ふとしたタイミングで薄く開けられる目。真っ黒じゃなくて、茶色味がかっている瞳に私が映って、愛おしげに細められた。
 私だけを見てくれていることが、こんなにも嬉しいなんて。
 また、こうしてキスできるかな。
 胸の中にストンと何かが落ちた。
 私……相野谷さんのことが好きみたい──。

 唇へのキスはそのままに、背中のファスナーが下ろされた。
 されるがままに身を任せるしかない。
 きっと、最後までしないという約束は守ってくれるはずだ。
 なのに、心のどこかでそんな約束反故にしてもいいと思っている自分もいる。
 今までこんなにも身体が疼いたことはなかった。もっと触って、もっとたくさんして欲しいなんて言えない。
 だから、相野谷さんが襲ってくれたらいいのに、なんて考えてしまう。
 キスだけで、こんなにも溺れてる。
 スカートの隙間から入り込んだ手が、私の太ももの内側を撫でた。もどかしくて身体を捩っても、相野谷さんの手は欲しいところへは触れない。
「あっ……や……」
「ん?」
 優しげな顔はそのままに、きっと何もかもをわかっているはずの彼はしらを切る。

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