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【4話】お見合い相手はスパダリ系ドクターでした!

作品詳細

 思わず口が開きっぱなしになってしまうぐらい驚きを隠せない私を、お父さんは優しげな眼差しで見つめた。冗談ではなさそうだ。
「え……待って……どうして?」
「ん? いや、千加はその彼と結婚するつもりだっただろう? 上手くいってるなら千加の恋愛に口をだすつもりはないよ」
 上手くいかなかったから振られたんだよ。
 押し黙った私の表情から言いたいことを察してくれたのか、お父さんは苦笑しながら話を続けた。
「父さんの大学病院時代の教え子にね、千加と合うんじゃないかなって男がいるんだ。もし別れたんなら、一度だけでも会ってみないかと思ってね」
「もしかして、相野谷あいのやくんのこと?」
 お母さんも知っている人なのか、お父さんが頷くのを見て瞳を輝かせる。
 まさかその相野谷って人が、お父さんに誰か紹介してほしいとでも言ったのだろうか。それとも、お父さんが?
 だとすると、相野谷さんはもしかしたら断れずに嫌な思いをしているかもしれない。先輩の命令は絶対だなんて言わないけど、縦社会に派閥、大学病院は色々と面倒だ。
 家でのお父さんは傲岸不遜なタイプではないし、患者さんからの評判もいい。けど、もし私が部下だったなら、元上司の言うことに逆らえない。
「相野谷くんは三十二歳……だったかな。大学病院の小児科で働いてる医師でね、まあなんて言うか異常にモテるんだ」
「そうね~尋常じゃないくらいにね。各階のナースたちが色めき立っちゃって、彼に何とか近づこうとする女の子が多かったわよ。しかも、患者からもアプローチかけられてるって言うし。なんか、ほら俳優さんにいそうな顔なのよ。甘いマスクっていうの?」
 そんなに格好いいんだったら、余計にお見合いなんてする必要がない。
 結婚相手だって選びたい放題じゃないのかな。
 ますます疑問が募る。
「でも、本人は実に志の高い青年でね。自分の実力以外のところで評価されてることに嫌気が差していて……ちょうど、先日飲みに行った時相談されたんだよ。そろそろ結婚を考えてるんだけど、誰も彼もが顔とステータスだけで見ていて恋愛ができないと。千加が元気なかったから彼とうまくいってないのかと思って、ついうちの娘はどうかな、なんて言っちゃったんだよねぇ。お父さんとしてはさ、やっぱり千加には幸せになってもらいたいし」
 ごめん、ごめんと悪びれなく告げられて困る。
 でも、お父さんの言葉の端々から、私から聞く修ちゃんの話より、その相野谷さんって人を気に入ってるってことは伝わった。
 修ちゃんを悪く言われたことはないけど、一度家に連れて来なさいって言われてたのに、修ちゃんが今度、今度って予定を先延ばしにするから結局叶わなかったんだ。
 お父さんとしても思うところはあったのかもしれない。
「あなたも相当な親バカね。相野谷くんも断れなくて困ってたんじゃない?」
「まあ、そうかもしれないが、本当に千加と相野谷くんなら合うんじゃないかって思ったんだよ。彼に興味が持てなかったら断ってくれていいし、彼から断ってくる可能性だってある。だから、一度会ってみないか?」
 どうしよう。
 確かに、漠然とではあったけど結婚を意識していたのは本当だ。
 もう二十八歳だし、周りの友達から結婚の報告を聞くと羨ましいとは思う。
 お父さんの紹介ならきっとおかしな人じゃない。
 数日前に振られたばかりなのに、もう次の人をってはしたない気がするけど、こんな私を好きになってくれる人なんか今後現れるのかって考えると、出口のない迷宮に迷い込んだみたいに答えはでない。
 それに、怖いのは変わらずだ。
 もしも相野谷さんと付きあったら……私はちゃんとエッチできるのかな。
 また同じ理由で、十年後に振られるんじゃないの?
 決められない。
 どうしようと縋りつくように、お母さんに視線を向ける。仕方ないわねって顔で苦笑されたけど、一度も会ったこともない人なんだからそう簡単なことじゃない。
「千加、相野谷くんの人柄はお母さんも保証する。会うだけ会ってみて損はないわよ? っていうか、女の子たちがキャーキャー言うのもわかる顔だから、一度見ておくだけでもいいと思うわ」
 お母さんまでもが、相野谷さんを推してくる。
「相野谷くんと恋人になれって言ってるわけじゃないから、お互い話してみて決めればいい。お父さんも、可愛い娘を嫁にやる算段をするなんて複雑なんだよ。ただ、彼は信頼できる男だから」
 お父さんたちにそこまで言わせる相野谷さんを見てみたい気になって、つい流されるままに私は頷いてしまった。

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