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【2話】お見合い相手はスパダリ系ドクターでした!

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「うわ、糀谷こうじたにさんかわいそ~十年も付きあった相手にそんなこと言われたら、救われねえぞ」
「仕方ねえだろ。付きあうまでは身体の相性なんてわかんねぇんだから。好きな人ができたって言うしかなかったんだよ。あいつ、顔だけは可愛いんだけどなぁ。もう結構限界だったんだよ……むしろ十年もあいつ抱き続けた俺を褒めてくれ」
 まさかの自分の名前、聞き覚えのある声とその内容に思わず背筋が張った。
 私が聞き間違えるはずがない。
 しゅうちゃん──相楽修一さがらしゅういちは十年も一緒に過ごしてきた人なんだから。
 彼らの話す内容は多数の社員たちが集まる食堂でするには場違いだし、もしも同じ部署の人に聞かれたらって考えると心中穏やかではいられない。
 けれど、話の続きが気になって結局私は怒ることもできないまま、食事の手を止めて話に聞き入ってしまった。
 まさか別れた恋人が背後にいるなんて思いもしないんだろう。
 同僚と話し続ける修ちゃんがことのほか楽しそうで、突き刺されるように胸が痛む。
「そんなに相性悪かったんなら、なんでもっと早く別れなかったんだよ?」
「若い頃ってさ……突っ込めればいいってとこあんだろ? とりあえずだすもんだしたいから、回数こなせりゃいいっていうか」
「ああ、まあな。なに……二十八になってセックスを楽しもうと思い始めたら、楽しめる相手じゃなかったってことか?」
「そんな感じ。千加もそろそろ結婚って思ってたみたいだし、結婚したらそれこそずっとあいつを抱くってことだろ? なんかそれ想像したら一気に冷めた。もっと積極的にっつーか、頑張ってくれりゃ~なぁ」
「おまっ……ひでえ奴」
 そう言ってギャハハと笑う同僚の声も、言葉とは裏腹に楽しそうだ。
 私の前では、いつだって優しかったのに。
 陰で語られる内容は失恋のショックに拍車をかけた。
 怒りは湧いてこない。
 ただ、悲しい。
 セックスで修ちゃんを満足させられない私って、どこかおかしいのかな?
 身体以外のところで繋がり合えていると思っていたのに。
 身体の相性が悪いって、別れる理由になるの?
 どう頑張ったら、修ちゃんは気持ちよくなったの?
 全然わからないよ。
 体質なのか性欲がもともとないのか、あまり濡れないのは自覚してる。だから修ちゃんが中に入ってくる時痛みしか感じない。
 擦られても、擦過傷を起こしたみたいにピリピリする。その痛みで喘ぐような声がでるだけだ。
 あとはひらすら、待つだけ。
 ゴム越しに中が温かくなったら終わりだ。
 私にとっては苦痛の時間。
 修ちゃんは私が気持ちよくなってるって勘違いしてたみたいだけど、ずっと触れられるのも、挿れられるのも苦手だった。
 でも、身体の相性なんて、直そうとしたって直せるものじゃない。
 もしまた恋人ができたとしても、同じことを言われたら──?
 どうすればいいんだろう。
 もう、誰かと触れ合うことが怖い。

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