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【16話】お見合い相手はスパダリ系ドクターでした!

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 お弁当を作り終わっても時間はまだだいぶ早い。
 時計を見上げて期待に胸が高鳴った。
 でも、疲れてるんじゃないかな。
 明日楽しみにしてると連絡をくれた時間は、すでに夜の十時を過ぎていた。
 私は週休二日、残業もそう多くない気楽なOLだけど、相野谷さんの休みは日曜日のみだ。それに、担当している患者さんに何かあった場合すぐに病院に行かなければならない。
 数年前まで、しょっちゅうお父さんの仕事用携帯が鳴っていたことを思い出して、改めて大変な仕事だと思った。
 手術が行われる曜日は決まっているものの、そのほかに通常外来もあれば緊急外来、事務仕事だって待ってはくれない。
 週に一度とはいえ、朝から長時間手術室に立つのは大変だとお父さんも言っていた。手術が終わっても患者の家族への説明、患者が麻酔から覚めるのを待って看護師へ指示を出す。
 そこまで終えてようやく、人心地つけるのだと言う。
 だから、相野谷さんが忙しいことなど百も承知で、せめて休みの日ぐらいはストレスフリーに過ごして欲しいってピクニックという提案をしてしまった。
 それに、屋上で過ごした時に楽しそうにしてくれてたし。
 歩くことも考えて、今日はスニーカーに黒のジーンズというラフな格好だ。
 敷物も持ったし、カゴいっぱいに作ったお弁当も持った。今日は天気がいいから喉が渇くかもって、水筒は大きめの一リットル入るサイズ。
 車で来てもらうのも申し訳なくて断ろうとしたけれど、甘えておいてよかった。結構な荷物の量になってしまって、持ち歩くことを考えると車がベストだ。
 リビングに戻っていると、玄関でチャイムが鳴る。
 お母さんと相野谷さんが楽しそうに喋る声が聞こえて、私も大急ぎで玄関へ向かった。
「おはよう」
「おはようございます」
 先日のスーツ姿もネクタイや小物類まで洗練された格好良さだったけど、足が長いからかジーンズ姿も素敵だ。
 淡いイエローのシャツのボタンの一番上が開けられていて、そこから覗く胸元に頬が熱くなる。
「千加、いくら相野谷くんが格好いいからって、そんなに顔にでてたら一日保たないわよ」
 かなりいっぱいいっぱいだからからかわないでと睨むが、お母さんは何処吹く風だ。
「じゃあ、遅くなる前に送り届けますね」
「いい歳した娘だもの~泊まりでもいいわよ。千加のことよろしくね」
「ちょっ、お母さん!」
 助手席が開けられて窓越しにお母さんに手を振ると、車はゆったりとしたスピードで走りだした。
 車は一般道路を通り高速を抜けた。そう長く高速を走っていたわけじゃないが、先ほどまで見ていた景色は一変し、左右に長閑な風景が広がっている。
 私の家から四十分かからずに来られる、県が運営する面積三十ヘクタールにも及ぶ広大な公園だ。
 四季折々の花が咲き、庭園に温室、小さな動物園、子どもが楽しめる広場があり、近隣に住む私にとっても馴染みの場所だった。
「ここ、久しぶりに来ました」
 昔来た時と変わった様子はなく、懐かしい空気だ。
「うん、だと思った」
「お父さんに聞いたんですか?」
「そうだよ。いいところありますかって聞いたらここを教えてくれた。昔は俺が連れて行ってたのになって感慨深そうにね」
「懐かしいです。父と母、同じ小児科医なんで、長期の休みが被らなかったんですよ。どっちも休むとか病院的に困るみたいで。だから、母が休みの日には手料理を教えてもらったりして、父が休みの日にはよくここに連れてきてもらいました」
「へぇ、じゃあ糀谷先生に頼んで今度千加の子どもの頃の写真見せてもらおう」
「ええっ? それは恥ずかしいです……」
 広場で小さなテントを張り、横になれるようにと敷物を広げた。弁当や水筒といった荷物を置き、風に飛ばされないよう固定する。
 相野谷さんの慣れた手つきに惚れ惚れするばかりだ。
 アウトドアのイメージはあまりなかったのに。

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