【19話】クールで口下手な専務の溺愛プロポーズ

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「新見くんは、家族に会ったことありますし……」
 弟たちを塾にも行かせてあげられなかったのを心配し、大学が夏休みの間家庭教師を買ってでてくれたのが新見だった。
 両親が亡くなったばかりで、いくらそれなりに保険金が下りたとは言っても、まだ学生だった成美は将来の不安もあり、法律に詳しい新見にいろいろと相談に乗ってもらっていたのだ。
 そんな新見が成美と同じ会社を受けたと知った時は驚いたが、心強くもあった。
「俺には言えないことも新見には言えるのか。君はあの男が好きなんだろう? たしかに〝映画館で寝ちゃうような可愛い男〟かもしれないしな」
 それはただの喩えで言っただけで、新見のことを指していたわけではない。そもそも新見は可愛いというタイプではなく、角ばった勇ましい顔立ちで、重々しいほど筋肉質な体格をしている。
 ただ成美は、東馬が映画を見ながら上映中に寝てしまっても気にしません──そう言いたかっただけだ。
 どうしてこうも気持ちが伝わらないのだろう。大事に思われていると感じる幸せな時間もたしかにあるのに。
(ちゃんと、話をしないと……)
 今のままでは何も変わらない。
 成美の気持ちだって伝わらない。
 日に日に東馬への想いは募っていくというのに。
「違います……新見くんはそんなんじゃないですから」
「だったら」
 スーツの中でスマートフォンが震える。
「すみません……電話が」
 電話はバイト先からだった。仕事中に出る必要はない。成美がスマートフォンの電源を切ろうとすると、東馬がそれを遮った。
「電話に出なさい」
 成美の答えを待たずに東馬は会議室を出て行ってしまった。一人残された成美は深く息を吐くと、執拗に鳴り続ける電話を取った。
「はい」
『あ、成美ちゃん? 出てくれてよかったよっ! 申し訳ないんだけどさ~今日もシフト入ってもらえないかな。レンタルデートしたいってお客さんから成美ちゃん指名で予約が入っちゃったんだよね。何度も連絡もらってる常連さんだから断りにくくて。指名料にプラスして時給倍出すからさ、お願いっ!』
「今日……ですか。多分、大丈夫だと思います」
『助かるよ~じゃあよろしく!』
 東馬とちゃんと話をしたかったのに。
 毎日顔を合わせていても、自分たちはどうしてか噛み合わない。
 プレシャスで会っている時は、まるで本当の恋人同士みたいに触れ合っている。けれど、会社では相変わらず冷たい態度を取られることが多い。
 そんな東馬の気持ちがわからない。
 いつも怒らせてばかりいる成美に、もう呆れているのではないか。そう考えると、どうしてと理由を聞くのすら怖くなってしまう。
 東馬ではない男性と今日デートをする。仕事だ。わかっている。いつまでも東馬に頼ってばかりはいられないことは。
 成美に時間を使っている分、東馬はプレシャスに来た翌日は深夜まで働いている。平静を装ってはいるが疲れもかなりのものだろう。
 通話を終えて深いため息が漏れた。
 家族を養うためとはいえ、金のために自分で選んだ仕事だ。頑張って弟たちの進学分の貯蓄ができたら辞めればいい。それまでの辛抱だ。
 仕事が忙しい東馬にその後呼ばれることもなく、同じ部屋にいるのにただ淡々と仕事をこなす時間が過ぎていった。定時が近づくにつれて気分は塞ぎ込んでいく。
(これ以上、甘えられない)
 成美が頼りないから心配してくれているだけだ。仕事が忙しい東馬に助けて欲しいなんて言えるはずがない。

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  1. 「甘えた男とチョロイン事典」(夢中文庫/水口めいさん漫画・深志美由紀原作)
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