指先にいたぶられるうちに、ナディアの背中や腰がしきりに反応していく。
「やっあ、あ……っ」
目を閉じのけぞらせたナディアの首筋に、セフェリノが歯を立て舌を這わせた――依然淫裂で彼の指先は泳いでいる。ナディアは享受するしかなく、切れ切れの声を上げていた。
これはいったいなんなのか――どうしてこんなことになってしまったのか。
「いやっ、待って……、ま……って、だめ……だめ、ぇ……っ」
腰に熱がわだかまっている。
「ここ……蕾、イイみたいだね」
セフェリノの指は執拗に敏感な場所をいたぶっていた。いけない、と思うのに、ナディアの意識はそこに集中していく。
セフェリノの長い指は、ナディアの肉を繊細に愛撫していた。指の動きにあわせ、快感が身体に広がっていった。
「も、だめ……だめ……っ」
訴えるなり、ナディアの身体にがくりと大きなふるえが走っていた。
「……あ……っ、あ……」
はじめてのことだった。
全身が甘く痺れ、跳ね――ぐったりとシーツに横たわる。
うっすら開いた目が、長い金の髪を背に流すセフェリノをとらえていた。
「ミラ……ンダ……」
「違うよ。セフェリノだってば」
「セフェリノ……? どう、いう……」
問いかけはそこで終わりだった。
腰から下にドレスの残骸をまとわりつかせた彼は、膝立ちになった前面の布地をたくし上げた。
裸身のセフェリノの下腹部――屹立するものを認め、ナディアはとっさに身を起こそうとする。
「ナディア、僕にもっときみのことを教えてくれ」
彼の力は強かった。
たやすくナディアの足を払う。ナディアは両足の間に進んできた彼の下半身に、しっかりとおさえこまれてしまった。要点をつかれると、もう体勢を変えることさえできない。
一度もシーツから身を起こすことなく、ナディアはセフェリノの下でふしだらな姿をさらしていた。乳房をさらすどころか、大きく足を開かされたはしたない姿だ。すべてをさらけだす格好で、ナディアは脱出する術を持たなかった。
なによりも彼がナディアのそのはしたない姿を喜んでいるらしいことが、一番恥ずかしくなってしまう。
淫靡な笑みがなにを望んでいるのか、さらにのしかかってくる重さのなかナディアは悟っていた。
天を仰いでいたセフェリノの男性が、ついさっきまで嬲られていた淫裂に押し入ってくる。
「セフェ、リノ……やめ、や……っ」
ずるり、と一度に男根が押しこまれた。
「……ひっ……」
息を吸いこみ、ナディアは目を閉じる――ひりつくような痛みがあった。
腰をふるいはじめた彼の腰にあわせ、それは断続的に湧き起こってナディアに交接の事実を突きつけてくる。
組み敷かれ、ナディアの純潔は散らされてしまった。
「ど、して……っ、や、ぁあ……っ」
「……わからない? ずっと僕はナディアに会いにきてたんだよ――僕のこと、ナディアはどう思ってた?」
見透かすような視線を目と鼻の先で受け、それが彼からのくちづけによってふさがれた。
ミランダのことをずっと良く思っていた。友人に対するものとしては、度を越えた好意を持っていたのだ。
しかし、こんな結果は望んでいなかった。
「いや……ぁっ、あぁ……っ、ん……っ」
声が媚びるような高いものになっていく。猛りに淫壁を責め立てられ、ナディアの情欲は明らかにそこに甘いものを感じ取っていた。ひりつく痛みはどこかに去り、彼の腰つきの獰猛さに身をまかせてしまいたくなっている。
「い、や……っ、だめぇ……だめ……えっ」
「ナディア――気持ちがいいよ」
たやすく告げられた言葉に、私も、と応えそうになってくちびるを噛む。
彼の腕が、開かされていたナディアの片方の足を抱え上げた。
「ひ……っ、ぃ、あ……ああぁ……っ」
男性の先端が、さらに奥をこすり上げる。
「ぁあっ、あ……っ、や、ぁ……んっ」
――気持ちがいい。
こんなことになった経緯がもう思い出せなくなっている。強い快感はナディアの思考を止め、彼の身体にしがみつかせた。
「……だ、めぇ……おかしく、な……っ」
「いいね、おかしくなって――ナディア、僕のものになるんだ。ほら、いこう。きみのいくところを見せて」
「や、やぁ……っ、あっ」
快感で意識が白く灼けていく。
密着した肌が熱く、ナディアは彼の背にきつく腕をまわしていた。
「だめ……おかし、おか……ああっ、あ……あぁっ」
取り乱した声は悲鳴じみていた。背を浮かせたナディアは、彼の温かい背に爪を立てた。
淫蕩な結合部に、彼の体重がかけられる。
耳元で彼のかすかなうめき声を聞き、淫道の最奥で肉の蛇がのたうつのを感じた。
「んっ、ぁ……あ……っ」
内股に密着したセフェリノが身じろぐと、それさえもナディアに淡い快感を与えてきた。
目を開くと、よく知るミランダ――セフェリノの顔がある。
どうして、という問いかけは、ふたたびくちづけられ果たせなかった。
ぐったりしたナディアに毛布をかけ、セフェリノが赤いドレスに袖を通していくのを見守った。ぼんやりした意識のなか、ドレス自体に豊かな胸が縫いつけられているのがわかる。
身体が鉛のように重かった。
「ナディア、またお邪魔するよ。誰も部屋に入らないよう伝言していくから……おやすみ」
そう告げる彼は、どこからどう見ても、いつものミランダそのひとにほかならない。
なにもいえないでいるナディアをベッドに残し、彼は寝室を出ていった。
見送るナディアの脳裏に、ひとつの名が降り立っている。
――セフェリノ。
――セフェリノ・ソロリオ。
――レオラ国王ウリアルト三世。
「……まさか」
陛下が女性の姿でサロンに現れる。
まったくもってあり得ないことだ。
ナディアは目を閉じ、そうすると瞬く間に眠りに落ちていったのだった。