【6話】国王陛下の寵愛蜜戯~獰猛な独占欲~

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 お針子の協会から融通してもらったトルソーにドレスを飾り、寝室の壁際にいくつも鎮座させてある。
 尋常でない光景といえたが、ナディアを振り返ったミランダは興味津々そうに目を輝かせていた。とうてい友人を招き入れられるような状況ではないが、当の新しい友人は寝室から出ていきそうにない。
「新しいことをしようかと……それで、集めてみたんですけど」
「新しいこと?」
「髪を整える前に、着替えてみたらどうかなって。サロンにいる間だけ着替えて遊ぶような……」
 ナディアの親類に衣装持ちの女性がいる。
 少し前に思いつきを手紙にしたためて相談したところ、返事の手紙にはいくつかドレスがついていた――親類はクローゼットを埋めたドレスをもてあましており、ちょうどいいとばかりにナディアに送ってきたのだ。しかし後日彼女たちの家族からは、クローゼットが空いた分、またドレスを新調しはじめている、と非難がましい手紙が届いていた。
 ナディアは親類だけでなく、ほかの知人たちにも声をかけていたため、予想以上に集まってしまった。
「ずいぶんといろいろ考えている」
「ええ。おうちの事情によっては、あんまりおもてを出歩くことってないでしょう? サロンになら髪の手入れを理由に出てこられるから、息抜きに、っていってくれるひとが多いの」
「……それは同感」
「ありがとう。だから普段なら着ないようなものを着て、普段しない髪型にしたら楽しんでもらえるんじゃないかと思って」
 たくさんのドレスのなか、系統の違うドレスを何着か見繕って部屋に移してみた。しかしトルソーを立てたところで作業は止まっている。常連が揃うときにでも切り出そうと思うが、髪を結い着替えもするとなると、気楽にぶらりときた客人全員をもてなすにはなかなか難しい。
 人手を増やすことも考えているが、毎日の忙しさに先送りにしてしまっている。
「散らかったところを見せてごめんなさい、お茶を……」
「ねえ、これは?」
 ミランダの視線はドレスに向かっており、その手が検分しはじめている。
「これ、ナディアに似合いそう」
「私?」
 ミランダが指さしたドレスは、いつもナディアが選ぶものとはまったく違う趣向のものだ。選ぶ選ばない以前に、こんな大胆なドレスは持っていなかった――肩や胸元が露出し、背中が大きく開くものなのだ。
 それは舞台女優から譲ってもらったものだった。以前咳止めを処方したことがあり、効き目がよかったらしく、それ以来毎回舞台に招待してくれている。
 そのドレスは彼女が舞台で使用する予定だったが、あまりに扇情的だと劇場の支配人から注意を受け、使用を見送ったと聞いているものだ。
「どう?」
「わ、私こういう大胆なものは持っていなくて」
「着たこともない?」
 うなずくと、ミランダはナディアの後方にまわって肩を引き寄せはじめた。
「なんだ、それこそ気分転換におもしろい」
「気分転換?」
 いつもナディアが口にしているものだ。
「ほかのひとが着て大丈夫なものか、ナディアが試せば? 私が審査しよう」
「で、でも」
 ナディアより背の高いミランダのほうが、ずっと似合いそうだった。
「髪飾りのこともあったし、ちゃんと人払いをしない?」
「え?」
「髪飾りのこと、知らない間にひとに知られていたわけでしょう? そういうのは避けたほうがいい。うっかりひとに知られたら、ドレスの用意も台無しになりそうだし……ちゃんと人払いして、内密にしておいたほうがいいわ」
「いまはもう、うちのものしかいないから……」
「どこから漏れるかわからないよ」
 声を落としたミランダの言葉は、なんだか迫力があった。
 そういわれると、そんな気がしてくる――ナディアはリョースを呼ぶと、しばらく試着をするから声をかけないでくれるよう頼んだ。
 試着すると話してしまっては、人払いの意味が薄いかもしれない。リョースはナディアの部屋の掃除もしてくれており、ドレスの存在はとっくに知っているのだ。
「そうだ。ミランダさんもリョースに手伝ってもらって、よかったら一緒に……」
 着替えてみる? と続けようとした言葉は、出てこなかった。
 知らぬ間に真後ろに迫っていたミランダの手がすばやく動き、ナディアのドレスを脱がしにかかりはじめていた。

「すごくよく似合ってる!」
 はしゃいだ声に、ナディアは真っ赤になってうなずいていた。
 もううなずくことしかできず、彼女にドレスを脱がされたり、下着姿をさらしたことが頭から離れてくれない。
 ――友達になったとはいえ、これははしたないことではないか。
 羞恥がナディアを涙ぐませていた。
「ね、ねえもういいでしょう」
 上着でもいい、なにか肌を隠すものが欲しい。
 あたりを探すが、ミランダがそれをさせてくれなかった。
「ほら、一回転して見せて! ああ……きれいだ! ほかのやつには見せたくないな」
「へ、へんなこといわないでぇ」
 上擦ったミランダの声に、ナディアは顔が真っ赤になるのを自覚した。首から上が熱くてたまらない。
「ほら、髪を上げて……うなじを出してみたらいいんじゃないかな。手伝うよ」
「う、うなじ?」
 両手を使って髪を上げようとすると、後ろからミランダの両手がうなじに押し当てられた。
「……っ」
 押し当てられた手のひらがゆっくり肩を撫で、後方からまわされて鎖骨をなぞりはじめる。
「あ、あの……ミランダ……さんっ」
 ミランダの体温のせいなのか、肌に奇妙な感覚が広がっていた。

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