【29話】国王陛下の寵愛蜜戯~獰猛な独占欲~

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「や……あぁ……っ」
 恥ずかしさに気が遠くなりそうだった。
「ナディア、もっと腰を使って……かわいいよ」
「いやぁ……っ、こんな……浅ましい……っ、いやぁ……」
 くちびるからいやだと漏らしているのに、ナディアの腰は止まらなかった。
 浮いた涙をセフェリノの舌がすくう――その間も彼の腰は旺盛にナディアを穿ち続けていた。
「きみが浅ましいなら、僕だって浅ましいよ」
 腰をふるう角度が変わり、ナディアは爪先でシーツをかく。彼の先端が責め立てる最奥に、ナディアの腰は蕩けそうになっていく。
「……うぁあ……んっ! だめ……っ、も……もう……ああっ」
「ナディア、これ……好きなの? こういうふうにされるの」
 乱れた吐息の向こう側で、彼の抽挿でみちみちと湿った音が上がる。
「セフェリノがいいの、セフェリノが……全部気持ちいいの……っ」
 言葉にしたとたんに、ナディアのなかで羞恥心が吹き飛んでいた。
 いく、と何度も口走り、セフェリノとともに腰を振り、乱れた吐息のなかナディアは登り詰めていた。
「……っん、ぁあ……っ、あ、ぅ……っ!」
 意識が真っ白になり――ナディアはセフェリノの放つ樹液を受け止めながら、シーツで身体の力を抜いていった。

   ●

 早朝から馬車に乗り、ナディアは王都ナルトラムに向かっていた。
 朝食を取るよりも先に、ミランダからの迎えが現れたのだ――しかしいざ馬車に乗ってみると、そこにいたのはセフェリノである。ミランダの迎えということが方便で、実際は彼がナディアを連れ出そう、というのだ。
 艶やかともいえる笑顔を浮かべた彼は、サロンを訪れたときのように女性の出で立ちだった。
「……いいの? 異国の青年がこんなことしていて」
「給仕長は僕のことをわかってるから、出てきても大丈夫だよ」
 馬車が進むとセフェリノは、足元に置いてあった箱からかつらを取り出してナディアに見せた。
「短いまま歩くと、ちょっと人目についちゃうから。ナディア手伝って」
 かつらの入っていた箱には、櫛や油など髪を整える道具が適当に突っこまれていた。ナディアとしてはもっと大事に扱ってほしくなる。
 金色の髪を使ったかつらだが、セフェリノ本来のものに比べて色味が薄い。つけてみれば、背中のなかほどまでの長さだ。帽子を被るというので、ナディアはかわいたさわり心地の髪を三つ編みにしていく。
「式典でかつらを被ったらいけないの?」
 思いついた質問を口にしてみる。
 セフェリノの間近に立つのは、王城で彼と近しいものたちだろう。かつらであることを彼らが漏らすと思えないし、民に発覚しなければいいのではないか。
「格式にうるさい連中がいるんだよ。そいつらがおとなしくしてくれてたら、べつにそれでいいんだけど」
 政治はひとりでするものではない――以前セフェリノが話していたことだ。
「お昼には着くように走らせるから、あっちでなにか食べよう」
 窓にかかったカーテンの隙間から、そっとおもてを見てみる。確かに馬車の速度ははやかった。しかし揺れる感覚はなく、しばらくするとナディアは彼の肩を借りうたた寝をしていた。
 肩を揺らされて目を覚ますと、すでに馬車は王都ナルトラムに入っていた。
 ナディアは数える程度しか訪れたことがない――そのすべてが、父の仕事に付いてきてのことだ。
 セフェリノにともなわれて歩きはじめる。
 堂々と歩くセフェリノは、喉仏の隠れる衿のドレスのためか、単なる長身の女性にしか見えない。しかし背の高さは人目を引くようで、何度か「大きいね」というささやき声を耳にしていた。
 連れられて入ったのは、以前メトンで利用した食堂によく似た、そこよりは幾許いくばくか上等な店だった。
 気軽な店構えなのは確かで、彼にまかせて注文してもらった料理はどれもおいしかった。芋とチーズをくるんで焼いたパンがとくに気に入っている。
「おいしい! ここにはよくきてたの?」
「ぶらぶらしてるうちに見つけたんだ。あまり店員も話しかけてこないから、居心地もいいし」
 ひたいをつき合わせるようにして、ちいさな声で話す。声ばかりはセフェリノは低く、ずっとのどの調子が悪いと聞いて信じていたが、いまになれば女性というには無理があると思ってしまうものだ。
 人気があるのだろう、店内はつねに客で埋まり、空席がないか尋ねる声が引っ切りなしに届く。
 食事を済ませたナディアたちは、そうそうに席を立った。
「セフェリノ、目当てはあるの?」
「とくには……散歩してるうちに、おもしろいものでもあるんじゃないかな」
 天気もよく、往来は昼時とあってかさほど混雑していない。
「それなら、ちょっと寄りたいところがあるの」
「いいよ。場所はわかる?」
「何度かきたことがあって……父と一緒だったんだけど、道は覚えてると思う」
 頭のなかで、進んだ道を思い起こす。大きな木のある通りを右に折れ、飴細工をつくる職人の家から流れる甘い香りのする道を進んで――道の先にそのとおりの木が現れ、ナディアはひとりほっと息をついていた。
「この格好できたの、ちょっと失敗だったかなぁ」
「どうして?」
「今日はゴードンがいないなら、ちょうどいいとも思ったんだけど……女同士だと、手をつないで歩けない」
「……男女でも、そんなことしたら駄目よ」
 公然と恋人同士だ、夫婦だと明言してもいないものたちが、往来で取っていい行動ではなかった。
「ねえナディア、僕たちなんなの?」
 見れば、セフェリノはにんまりと楽しそうな笑みを浮かべている。
「ずっときみといるつもりだって、何回いったら信じてくれる?」
「……だって、あなたは」
「おかしくなんてないよ。僕に婚約者はいないし、結婚相手くらい自分で選ぶよ」
 信じたい。
 政治的な話からは遠ざかって暮らしている。彼のいう言葉を鵜呑みにしていいのか――いまくらいはいいじゃないか、とナディアはうなずこうとした。

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