【16話】国王陛下の寵愛蜜戯~獰猛な独占欲~

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「髪の毛って案外重いんだね、いまはすごく首が軽い」
 うなじがすっかり露わになっている。寝癖がつくほどの短い髪など、レオラ王国では赤子や異国のものでなければ見ないものだ。
「火が点いちゃってさ、焼けたらもう駄目だね。切るしかなくて」
 髪が焼ければ、もう周囲に隠すことはできないだろう。
 王が突然髪を焼いて戻ったら、城内も騒然としたはずだ。
「ちょっとナディア、そんな泣かないで」
 あわてた声に抱きしめられ、やっとナディアは自分が涙をこぼしていることに気がついた。見た目以上にしっかりしている彼の胸に引き寄せられて、ナディアは顔をくしゃくしゃにしてすがりついた。
「ナディア、僕なら無事だったんだから」
「ち、ちが……」
 まったくもって無事ではない。
 ナディアの涙は止まるどころではなかった。
 ひどい、と一度こぼれ出ると、ナディアのくちびるは延々とそれをくり返した。
 ――ひどい、ひどい、ひどい、ひどい。
 ――あんなにきれいな髪だったのに。
 ――とても大切なものなのに。
 ――セフェリノにひどいことをするなんて。
 ――ひどい。
 涙と一緒にそんな言葉がこぼれ落ちていく。
 泣きじゃくるナディアは、セフェリノの腕に抱え上げられてベッドに運ばれていった。
 いくら泣いたところで、セフェリノの受けた被害は変わらない。
 わかっていても涙は止まらず、彼の受けた被害がつらくてこらえられなかった。

 うとうとしていたナディアを、セフェリノは抱きしめていてくれたようだ。
 薄暗い部屋で目を覚ますと彼が横にいて、ずっとナディアが欲しかったぬくもりに包まれていた。
 怒り、混乱し、泣き疲れて眠ってしまっていた。
「ナディア、会えてよかった」
 彼の無事がわかって喜んだのも束の間、顔を合わせたセフェリノは髪を喪っている。胸を占めた喪失感は大きく、間近で微笑んでいる彼の髪の短さに、また涙がこみ上げそうになる。
「泣かないでいい。生命があれば、また髪はのびる」
「……で、でも……っ」
 まぶたに彼のくちづけを受け、そこでナディアの頭は回転をはじめた。
 セフェリノの腕も毛布も跳ね飛ばす勢いでがばりと身を起こし、ナディアは寝室を確認する。
 ゴードンの姿はない。
 いつからいないのかはともかく、セフェリノにベッドに運ばれて添い寝されていたのだ、もうゴードンの誤解を解けない気がしてくる。
「ナディア、どうした?」
「ゴードンさんは……」
「とっくに出ていかせたよ。大丈夫」
 半身を起こしたナディアの身体を、セフェリノはあっさりと引き寄せる。
 身体の下に引きずりこまれるようになり、セフェリノを見上げた。彼の短くなった髪を目にするだけで、ナディアの涙腺はゆるんでいく。セフェリノは困ったように笑った。
「どうしたら笑ってくれる?」
 彼の顔が近づくと、ナディアは自然と目を閉じていた。
 くちびるが重なり、涙でひりつくまなじりを彼の指がそっとさすってくる。指の動きを気持ちが追いかけるより先に、温かい舌がくちびるの内側をなぞっていった。
「ふ……、っん……う……」
 舌のつけ根を刺激され、鼻にかかった声が漏れてしまう。
 ナディアは自分の身体――下腹部に疼くものを覚え、彼の胸を押し返した。流されていてはいけない。
「こんなときだし、その……はしたないことは……わ、私たちのこと、ゴードンさんも誤解を……」
「誤解はともかく、どうしてゴードンが素直に出ていったかわかる?」
 わからず、ナディアは彼を見上げた。明かりから影になっているものの、そこにあるのは端正な顔立ちだった。
「保護はされるけどね、おかしなものを持ちこんでいないか確かめておかないといけないんだ」
「確かめる……?」
「隠し持っていないかどうか」
 ドレスの上から、セフェリノの手がはしたない部分を撫で上げた。
「ひ……っあ」
 疼いている部分に刺激を受け、ナディアは高い声を漏らしていた。
「ほかの誰かに調べさせるなんて耐えられないからね。目を閉じていて」
「や……だ、だって」
「犯罪が絡んでるからなぁ。こればかりはしかたないよ」
 セフェリノが髪をかき上げる。襟足にかかる程度の金色の髪を目にしたナディアは、両手をきつく胸元でにぎり合わせて目を閉じた。
「……いい子だ」
 手を解かれ、ベッドに腕を広げさせられた。
 どうなるか予想ができ、そのとおりになっていく。
「目を閉じているんだ」
 ベルトやボタンが外され、部屋の空気に肌がさらされていく。下着に手をかけられたときにはまぶたを開きそうになったが、すんでのところでそれをこらえていた。
 すべて衣類を剥ぎ取られ、ナディアは身をよじろうとしたが、セフェリノが抱きしめてきたために、あきらめるしかなかった。
 抱きしめてきたセフェリノは、素肌だった――ナディアは目を開けるか迷う。彼まで、そんなはずは、と逡巡していると、身体をずらしたセフェリノの下腹部、猛る蛇がナディアの身体に押し当てられる。
「セフェリノ……?」
 堪えられず、ナディアは目を開く。
 彼の頭が胸元で動いていた。それに合わせ、胸元や乳房がついばまれていく。肌に降りてくる刺激に、ナディアはとっさに目を閉じる。
 腰が自然とうごめいてしまう。ふしだらなことは、彼との間に起きた一度だけだ。
 あのときに与えられた感覚を、ナディアはなつかしく思い出していた。
 そして欲している。
「んっ、ぁあ……っ」
 セフェリノのくちびるが尖った乳首をかすめていく感覚に、ナディアは目を開いた。かたちのいい鼻梁が押し当てられ、ナディアがため息を噛む間にも、舌先でそのかたちをなぞられていく。
「や、ぁ……あ」
 上目遣いになったセフェリノのくちびるに乳首は飲みこまれ、そっと吸い上げられた。ナディアはセフェリノの頭を抱え、金の髪をかきまわす。そうする間もしきりに彼の舌は乳首をすすり、大きな手のひらでもう一方の乳房を揉みしだいていた。
「ぅ、あう……んっ、ん、んぁ……っ」
 腰がひどく重くなっていた。
 彼の刺激は乳房に与えられているのに、ナディアの淫裂は疼き続けていた。そこから意識を逸らしたいのに、どうしてもできないでいる。

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