【4話】恋甘キッチン~溺愛社長の一途な独占欲~

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  結子さんのお宅から一番近い場所にある店は、輸入食材なども数多く揃う高級スーパーマーケットだった。珍しい種類の塩やハーブなども置いてあり、見ているだけで楽しい。
 その中から、私がいつも使っている塩や香辛料、無添加の調味料に、出汁をとるための乾物などを選んでいく。
 管理栄養士だった母は、なるべく添加物を避け、ビタミンやミネラルが豊富に取れるメニューをたくさん考えてくれた。組み合わせたらいけない食材や、一緒に食べたら消化を助ける組み合わせなどの専門知識も教わった。
 さすがに食事だけで虚弱体質が治るなんてことはなかったけれど、おかげで肌荒れや便秘に悩んだことはないし、生活リズムにさえ気をつけていれば、風邪をひくこともあまりない。
 買い物を済ませて結子さんの家に戻り、実家の倍くらい広いキッチンで調理を開始した。今回作るのは腕を見てもらうためのものなので、秋の食材を使ったシンプルなメニューだ。
 何を作るにせよ基本は同じで、できるだけ旬の食材を取り入れ、保存料が含まれる食材や調味料は極力避ける。あとは出汁を効かせて、薄味でも風味を豊かにすること。他には、消化を助けて栄養素の吸収を良くする調理方法や、食材の組み合わせを考えることだ。
 これらのルールを覚えるのは簡単でも、実行するのは難しい。
 レシピを考えることから始まって、買い出しから調理まで、とにかく手間がかかる。
 今は何でも簡単便利に時間短縮できることが重視されるので、無添加の食材や調味料を集めることが、そもそも大変だった。
「さて、と」
 今回作るのは和食で一汁三菜。栄養バランスと彩りが良く、素材の味を生かしたものに仕上げなくてはならない。
 私は調理自体も好きだけれど、何よりメニューを考えている間が一番楽しかった。
 あれとこれとそれを組み合わせて、こんな味付けにしようとか、色がこうなるから、見た目はこんな風にしたらどうか、とか。料理は無限の組み合わせと、色々な正解がある終わりのないパズル。生きている限りずっと楽しめる。
 なぜこれを仕事にしなかったのかと言えば、職業料理人は体力が命だからだ。そして私には肝心なその体力がなかった。
 作ったのは、サンマのムニエル、肉豆腐の青菜のせ、さつまいもと昆布の煮物、そして松茸と鶏ささみのすまし汁。彩りよくするために、ナス、にんじん、カボチャなどを付け合わせにした。
 私が唾を飲みつつ見守る中、結子さんは目を輝かせて箸を取り、最初にすまし汁を口にして、ほわんと幸せそうな笑顔を見せた。
「美味しいわぁ。香りもいいし、お出汁と塩加減が絶妙ね」
 そうして、次々と副菜や主菜の皿に箸を伸ばしていく。
「サンマも完全に火が通ってるのに柔らかくてジューシーだわ。チンゲンサイは根元にもちゃんと味が染みてる。これも、さつまいもの甘みが引き立って美味しいわね」
 結子さんは最後までニコニコしながら食べきって、「合格よ、百二十点!」と言ってくれた。
 こうして私は、夕飯が必要な日と来客がある日、ここへ来て料理を作ることになったのだ。

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