【35話】恋甘キッチン~溺愛社長の一途な独占欲~

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「とっ……まさ……っ」
 触れ方は優しいのに強引で、普段の彼とは雰囲気が全然違った。なんだか妙に色っぽく野性的。少し乱れた息遣いや、こちらにまっすぐ向けられる情欲を感じて、それにこちらも煽られる。自分の中にこんなにも官能的な感覚が眠っていたことに驚いた。
 貪るように深いキスを繰り返しながら、彼の手が首すじを撫で、そのまま胸元まで下りてくる。私はキスに応えるのに精一杯でしばらくそれに気付かず、捲られたブラウスの裾から入ってきた手に肌を撫でられてから、ようやくハッとした。
(待って……!)
 雰囲気に流されてキスを受け入れてしまったが、まだなんの覚悟も決まっていない。
 この先に進むのはおろか、付き合うことすら了承してはいないのだ。
 彼の胸に両手を当てて腕を突っ張ると、彼はようやくキスを止めて唇を離し、私と目を合わせて色っぽく微笑んだ。
「良かった。このまま里歩ちゃんが止めてくれなかったら、どこまで進もうかなと思ってたんだ」
「えっ?」
 私が驚きに目を見張ると、彼はおかしそうに笑って言った。
「まさか、さっき初めてキスした子を、そのまま最後まで食べちゃうわけにはいかないでしょ」
(最後までって……食べちゃうって……!)
 今の今まで、なまめかしいキスをしていただけに、その先がリアルに想像できてしまい、頭に血が上る。
 ただでさえクラクラしていた私の頭はそこで限界を迎えたのか、急に目の前が暗転し、そのまま意識を失った。

 私は体力がないのと合わせて、極度の緊張やストレスがかかると、自律神経に不調をきたし、倒れたり具合が悪くなったりする。
 今回気を失ったのは、透真さんとのキスがストレスだったわけではなく、今まで経験したことのない状況に置かれて、極度の緊張状態が続いてしまったためだ。
 目を覚ますと、そこは気を失った時にいた透真さんの寝室のベッドの上だった。
 その脇には透真さんと田村さんがいて、そしてなぜか見知らぬ男の人がもう一人、立っている。その人は、私の父くらいの年齢で、穏やかな顔つきをしているけれど、雰囲気に威厳みたいなものが感じられた。
 三人は私が目覚めたことには気付かないまま、会話を続けている。
「なぜお医者様を呼んだらいけないんです?」
 そう問いつめるのは、田村さんだ。そして透真さんとは違う、低く落ち着いた声がそれに続いた。
「そうだよ、透真君。呼ばなくても大丈夫なんて、どうしてわかるんだ」
「そもそも里歩さんは、どういった状況で倒れたんですか?」
 どうやら、医者を呼ぼうと言う田村さんを、透真さんが止めているようだ。
 倒れた状況を医者に説明なんて出来る訳がないので、止めてもらえて私もホッとする。でもそれも束の間――
「だから里歩ちゃんが気を失ったのは、僕がさっき強引に……」
「きゃーっ!」
(一体何を言うつもりですかっ!?)
 私が慌てて透真さんの言葉を遮るように叫んだら、三人はものすごくビックリした顔でこちらを振り返った。
「里歩ちゃん!」
「大丈夫ですか?」
 透真さんと田村さんが慌てて駆け寄ってくる。
 見知らぬ男性だけは、その場に留まったまま、こちらを見ていた。
「透真さん、ダメです」
 私が起き上がりながら口止めすると、彼はニコッと笑ってこう答えた。
「大丈夫だよ。二人には、知られても別に問題ないから」
「いえ、相手がどうとかではなくて……」
 するとそこへ、田村さんが口を挟んできた。
「里歩さん。何か問題があるならちゃんと教えておいてちょうだい。いつどうしたら倒れるのか、ある程度は知っておかなくちゃ対処できないでしょう」
 そう言われ、ウッと言葉に詰まる。
 田村さんが心配してくれているのは重々理解しているのだが、どうにも説明のしようがない。

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