【3話】恋甘キッチン~溺愛社長の一途な独占欲~

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 訪問を約束した日の午前中。
 緊張しながらお邪魔したのは、南欧風の大きくて可愛らしい邸宅だった。
 明るいクリーム色の塗り壁に、木目のドア。オレンジ系色の素焼き瓦が並ぶ屋根。玄関先のアーチや、そこまでのアプローチには鮮やかなグリーンの鉢植えが並んでいる。
 チャイムを押して出てきたご婦人――結子さんもまた、とても可愛らしい人だった。
 ふっくらした体型に優しそうな顔つき。穏やかで品のあるたたずまいや話し方。大事にされて育った箱入りのお嬢さまが、そのまま大人になったような印象だ。
「いらっしゃい、里歩ちゃん。待ってたわ」
 そう言って迎えられたお家の中は、外から見たイメージよりずっと広くて、贅沢な空間だった。天井は高く、家具や装飾品も、ひと目で高級なものだとわかる。
 結子さんのご主人はフランス人で、外資系医療機器メーカーの重役をしているらしい。仏語はもちろんのこと日本語や英語もペラペラで、ご自宅には国籍に関係なく多くの客人が訪れるという。
「重要なお客様をお迎えする時には、あらかじめレストランに頼んでシェフに来てもらうんだけど。お友だちや従業員なんかを招く時にはね、もう少し家庭的で、気軽に食べられるものを出したいの」
「じゃあ私は、お客様がいらっしゃる時だけ、ここに来ると……」
 そう言いかけたら、結子さんは頬を膨らませて、人さし指を軽く横に振った。
「いいえ。里歩ちゃんには、我が家の夕食も全面的におまかせしたいわ。とは言っても、付き合いで外食することも多いから、週に三日か四日くらいね」
 ご夫妻が家で夕食を取る予定になっている日と、気軽にお客様を招く日――それが、私の出勤日になるようだ。提案された報酬は日給で一万円。もちろん材料費は別だ。おそらく相場よりかなり高い。
「私でいいんでしょうか? こういうのは、やはりプロの方にお願いしたほうが……」
 不安になって尋ねたら、結子さんはニッコリ笑って言った。
「心配してないわ。だって夏美なつみちゃんのお墨付きだもの」
 夏美とは、母のことだ。
 私の料理の腕は、母に仕込まれたものなので、結子さんがその腕を信用しているのならば、ガッカリされることはないかもしれない。
「ならせめて、試しに作ったものを食べてみてから判断してください」
 それでも不安が残ってお願いしたら、結子さんは快く引き受けてくれた。
「いいわ。里歩ちゃんがそうしたいならね」
 その後キッチンへ案内してもらい、足りないものなどを書き出して、買い物へ出かける。

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