【2話】恋甘キッチン~溺愛社長の一途な独占欲~

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 数ヶ月後。
 無職になってからというもの、すっかり家に引きこもっていた私に、ある日、母がこんなことを言いだした。
「ねえ里歩。あなた、知り合いのところでお料理してみない?」
 どういうことかわからず首を傾げると、母は自身のスマホに保存してある写真を見せながら、説明する。
「この人、ママのお友だちの結子ゆうこちゃん。ほら、前に人材派遣の会社を経営してるキャリアウーマンだって話したでしょう?」
「ああ、うん……?」
 画面に映っていたのは、母と同年代の、とても上品で優しそうな女性だ。ハッキリとは覚えてないけれど、話を聞いたことがあるような……ないような。
「その人がどうしたの?」
「結子ちゃんはね、他のことは何でも出来る有能な人なんだけど、お料理だけは苦手なの」
 私は目をパチパチ瞬いて、首を傾げる。
「私がその人の家でごはん作るの?」
「そう! この間、里歩が作った栗のロールケーキをお土産に持っていったら、すごく美味しいって褒めてくれてね」
(お菓子とごはんは別ものだと思うんだけど)
 私は戸惑いつつも、作るのは別に構わないと考える。料理は好きだし、唯一とも言える私の取り柄だ。
 生まれつき虚弱体質だった私を少しでも健康に育てようと、母は昔から身体に良いとされるさまざまな食材を、食べやすいように工夫して調理してくれた。
 それを幼い頃から見ていたから、私も自然と料理に興味を持ち、何でも自分で手作りするようになって、今に至る。
 でも、これまで自分の作ったものを家族以外の人に食べてもらう機会がなかったから、喜んでもらえるのかどうか、正直わからなかった。
 すると母が私の迷いを見て取ったのか、こんな提案をしてくる。
「試しにやってみたら? 結子ちゃんにも、気に入らなかったらそこで終わりねって、伝えておくから」
「え? それ、一度だけじゃなく継続して通うって話なの?」
「そうよ。結子ちゃんは、自分の代わりにお料理だけしてくれる人を探してるの」
(つまり、パートの家政婦ってこと?)
「プロに頼んだほうがよくない?」
 そう言ったら、母は首を横に振って、肩をすくめた。
「色々な会社の人に頼んでみたけど、全員気に入らなかったんだって」
(そんなの、余計無理だし!)
 プロでもダメなのに、素人の私がお眼鏡にかなうはずもない。でも母はしつこく、ダメもとでいいから行ってみなさいと勧めてきた。
 思うにこれは、失業した私があまりにも外へ出ないものだから、何とかして家から出そうという、母の策略なのかもしれない。
「……わかった。行くだけ行ってみる」
 諦めてそう答えたら、母はとても満足気な顔をして頷いた。

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