【19話】恋甘キッチン~溺愛社長の一途な独占欲~

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 いつもより、だいぶ遅い帰宅になる。
 問題は明日の朝食だ。どうやって彼に食べさせたらいいのだろうか? まさか、ここにお泊まりするわけにはいかないし。
(田村さんが住み込みしてる理由がわかった気がする)
 透真さんは、一人で放っておいてはいけない人なのだ。
 かといって、彼の夕食が済んでから帰って、また朝食前にここへ来るというのも、かなり大変だった。
(どうしようかな~?)
 悩んでいたら、なぜかキッチンへ顔を出した透真さんが、「どうしたの?」と声をかけてきた。
「透真さん、お仕事は?」
「うん。そろそろお昼かなと思って」
 その言葉にギョッとして、彼の顔を見上げる。
「さっき食べましたよね?」
「あれ、朝ごはんでしょ?」
 当然のごとく、昼食は別と言い切る透真さんに驚き、唖然としてしまった。
(すごい……)
 自分には絶対無理な暴食っぷりに、むしろ感心してしまう。
「そんなすぐには準備出来ませんよ?」
「いいよ。里歩ちゃんがキッチンにいるところ、見てると楽しいから」
 そう言いながら、透真さんは当然のようにカウンターの椅子に腰かけて、見学する態勢に入った。
 料理中の私はクルクルとよく動くし、実際に目の前で料理が次々出来上がっていくのが、見ていて楽しいのだと言う。
「里歩ちゃんはさ、休みの日って何してるの?」
(休みの日……?)
 突然聞かれて、少し考え込む。
 前の仕事を辞めてからというもの、毎日がお休み状態だったので、特に何をするということはなかった。
「普通の生活を送ってますよ」
「普通って?」
「朝昼晩のごはんと、午後はおやつも作って、あとは家の中のことをちょこっと手伝ったり」
「全然普通じゃない」
「えっ」
 その言葉に驚いて、手を止める。
「どこがですか? 何も変わったことしてないと思うんですけど」
「変わらなすぎでしょ。専業主婦だって、休みの日はもっと違うことしてると思う」
 私はむうっと考え込み、他に何をしているか考えた。
 こういう時、単調で代わり映えのしない自分がちょっと嫌になる。
「……新しいレシピを考えたり、作るのに少し時間がかかるお菓子にチャレンジしたりします」
「それも仕事と変わらないよ。僕もあんまり人のこと言えないけど」
 変わらないのは当然だ。今は料理自体が仕事なのだから。
 でも以前はこれも、立派な趣味だった。
「どんな答えを期待しているんですか?」
 ダメ出しの連続に、ふくれ面で問い返したら、透真さんは反対にニッコリ笑ってこう答えた。
「里歩ちゃんをデートに誘うとしたら、どんな場所がいいかなと思って」
 返ってきた言葉にまた驚いて、しばし固まる。
(デートって……透真さんと私が? なぜ?)
 でも私はドキドキするより先に嫌なことを思い出して、首を横に振った。
「やめた方がいいです。私と出かけても、つまんないですよ」
 すると今度は透真さんが驚いた顔をして、スツールから腰を浮かせた。
「なんで? 僕と出かけるの、嫌?」
 私は慌てて違うと否定する。
「そうじゃなくて、本当に私とじゃつまらないんです。体力がなさすぎて三十分も歩いたら息が切れるし、続けて一時間以上は立っていられない。人込みにもすぐ酔うし、緊張してストレスが溜まると倒れるから」
 説明を聞きながら、透真さんの眉間にはだんだんとシワが寄っていった。
「もしかして、デートで倒れたことがあるの?」

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  1. 「甘えた男とチョロイン事典」(夢中文庫/水口めいさん漫画・深志美由紀原作)
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