TOP > 毎日無料 > 【16話】恋甘キッチン~溺愛社長の一途な独占欲~
2020
01.09

【16話】恋甘キッチン~溺愛社長の一途な独占欲~

毎日無料

作品詳細

「美味しそうな盛り付け方も、食べやすさも味も、全部満点だよ」
「ありがとうございます。私の料理は、母の愛情を受け継いだものなので。ホッとするのはそのせいですよ、きっと」
 そう答えると、透真さんは首を軽く傾げて問いかけた。
「料理は、お母さんに習ったの?」
「はい。母は管理栄養士をしていましたから。私は資格を何も持っていませんが、母は私のために考えたレシピを全て、自分でも作れるようにと私に伝授してくれました」
 生まれた時から虚弱体質だった私が、なんとか人並みの生活を送れているのは、母のレシピのおかげだと思っている。医食同源とも言うし、食べることは生きることと同じだ。
「なるべく添加物を避けて、身体にいいものを選んでるんですよ。旬の食材と、緑黄色野菜も多く取り入れて」
「じゃあ僕は、お母さんと里歩ちゃん、二人分の愛情を食べたんだ」
 その言葉に、私は驚いて目を丸くする。
 ――たしかにその通りだ。でもそんな嬉しそうな、幸せそうな顔をされたら、ちょっとドキドキしてしまう。
「そ、そうですよ。だからちゃんと食べてくれないと困ります」
 照れくささを隠すために素っ気なく返したら、透真さんはそれもお見通しとばかりに笑って「はーい」と返事をした。

 お腹がやっと落ち着いたからと、今度はシャワーを浴びに行った透真さんを見送り、私は家の中の片付けに勤しんだ。
 物が落ちていたり、散らかっているのは透真さんの行動範囲のみで、その他の部屋は驚くほど綺麗だ。
(田村さん、すごい……!)
 もう八十歳近いおばあちゃんなのに。一人で三食用意して、こんなにたくさんある部屋の掃除も完璧だなんて、家政婦の鑑だと思う。
 田村さんがいないと家がとんでもないことになると言った結子さんの言葉は、本当だった。
(さて、残りの一つはどうしよう?)
 三大家事のうち、炊事と掃除はあらかた済んだので、あとは洗濯だ。
 彼は今、お風呂場にいて、おそらく着替えもしただろうから、洗濯機を回すにはちょうどいいタイミングだと考える。
(透真さん、自分で洗濯機回せるかなぁ……?)
 これまでの様子から考えると、あまり期待できそうにない。となると、彼の着ていた服を洗って干して畳むところまでが、私の仕事になる。
 普通に着ている服ならば別に気にしないのだが、そこに下着が含まれるとなると、安易に手を出していいものかどうか、悩んでしまう。
(うーん……やっぱり本人に相談かな)
 透真さんのような素敵な男性に「パンツも洗っていいですか?」と聞かなくてはならないなんて。まともに恋人もいたことがない私には、かなり厳しいミッションだ。
「これも仕事だと思えば割り切れ……るかなぁ?」
 そう呟きながらお風呂場へ向かうと、ちょうど彼が脱衣所らしき場所から出てきたところだった。
「きゃーっ! ご、ごめんなさいっ」
 私は驚いて即座に回れ右をし、来た道を叫びながら戻る。
 なぜなら、彼が腰にバスタオルを巻いただけの、ほぼ裸同然な格好で、廊下へ出てきたからだ。
(なんで服を着てないのーーっ?)
 廊下の角を曲がったところで私は足を止め、壁に寄りかかってハァ~っと息を吐いた。
 心臓はバクバクしていて、脳裏には先ほど見た透真さんの半裸姿がチラつき、どんどん頭に血が上っていく。
 彼は着やせするのか、思っていたよりずっと逞しい身体をしていた。しかもお風呂上がりで髪が濡れている上に、綺麗な肌が上気してつやつや輝いている。
 目にしたのは一瞬だったのに、その姿は脳裏にバッチリと焼き付いてしまった。
(私、どれだけイヤらしいの!)
 そんなつもりは全然なかったのに。こんなんじゃ、意識しすぎてもう透真さんの顔を見られない……!

作品詳細

電子書店で全話購入

Copyright © 夢中文庫 All rights reserved.