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2020
01.02

【15話】恋甘キッチン~溺愛社長の一途な独占欲~

毎日無料

作品詳細

「お箸はどこだっけ……あった!」
 造り付けの食器棚の引き出しを開け、箸と箸置きを取り出して、テーブルに置いた。
 さっきと同じく部屋の隅でこちらの様子を窺っていた透真さんに、「できましたよ」と声をかけたら、彼は文字通りすっ飛んで来た。
「うわあ……美味しそう!」
「どうぞ、めしあがれ。あ、飲み物は何がいいですか?」
「飲み物?」
「はい。お水かお茶か……他に何か?」
 透真さんはなにやら呆然としていて、でも匂いにつられたのか、テーブルの上に視線を戻して席に着いた。
「水でいい。あの、もう食べても?」
「はい、どうぞ」
「いただきます!」
 多少食い気味にそう言って、透真さんはがっつくように食べ始めた。とは言っても、マナーはそれなりに守っている。
 多少口に入れる量が多いけれど、お箸の持ち方は綺麗だし、上げ下げもきちんとしていた。背筋は伸びていて、テーブルに肘もつかない。何より、とっても幸せそうな顔で食べてくれている。
「美味しいですか?」
 聞いたら、彼は口をモグモグさせながら、首を縦に振った。
「良かった」
 そう言って笑うと、彼はこちらを見て口に入っていたものをゴクンと飲み込み、その直後、思いっきりむせた。
 気管に入ってしまったらしく、ゴホゴホと咳き込む彼を見て、私は慌ててお水の入ったグラスを差し出す。
「大丈夫ですか?」
「平気……」
「よく噛まなきゃダメですよ」
「ん……ありがとう」
 その後も、私は彼が食べる様子を見ながら洗い物をして、お茶の用意をした。
 茶葉と急須はすぐに見つかったし、使い勝手が十分に計算されたキッチンは、どこに何があるのかわかりやすくていい。動線にも無駄がない。
(うちもこれくらい余裕があったらいいのに)
 でもこのキッチンは我が家のリビングくらいの広さがあるので、同じような感じにと望んでも叶えるのは難しいだろう。こうして良いものを知り、目だけが肥えていくのも困りものである。
 調理器具の次は綺麗に食べ終わったお皿を片付け、入れたばかりのお茶を出した。
 すると透真さんが、なぜか目を潤ませながら私を見つめてくる。
「里歩ちゃん、ごちそうさま。すっごく美味しかったよ」
「そうですか。それは良かっ……」
「本当だよ! 本当に美味しかった!」
 またしても食い気味に、しかも前のめりに訴えられて、思わずたじろいでしまう。一応褒められているので、私はわかりましたという意味を込めて、コクコクと頷き返した。
 こちらが引き気味なことに気付いたのか、彼は姿勢を正し、落ち着いた口調で語り始める。
「里歩ちゃんの作る料理って、なんていうか……凄く染みるんだ。食べたらホッとするし、幸せな気持ちになれる」
 私は忙しなく瞬きしながら、透真さんの真剣な表情を見つめ返した。
 あまりにもお腹が空いていたせいで、味覚にプラスの補正がかかってるんじゃないかとも思うが、ここまで手放しで褒められると、ちょっと嬉しい。

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