【35話】強引御曹司に注がれる溺愛の味

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『寮に部外者はダメかぁ』
「ダメってわけじゃないんだけどね、ここはすぐに出て別の寮に行かなきゃならないかもだから、落ち着いたらでいい?」
『もちろん。期待して待ってる!』
 どうにかごまかせたことに安堵すると、芳美の声色が変わった。
『今日電話したのはね、メッセージじゃちょっと……と思って』
「何かあったの?」
『うん。ほらあの……涼子の元カレの、吉岡さんなんだけどね?』
 突然飛び出した名前に涼子の体が固まる。スマホを持ち直して小さく深呼吸した。
「……どうしたの?」
『涼子のことが吉岡さんの会社にバレたみたいでさ。吉岡さんの会社からうちに来る営業って彼だけだったでしょ? 担当変えられちゃって、いま別の人が来てるんだよ』
「バレたっていうのは、婚約者の女性が乗りこんできた話がバレたってこと?」
『そう、それ。どこでどう話が回ったのかわからないんだけど、うちの社長に恥を掻かせてしまったって、吉岡さんの会社の社長が平謝りして、その後に吉岡さんを営業から外して左遷にしたとかなんとか』
「えっ!」
『乗りこんできた婚約者の女性も、責任を取らされたのか知らないけど、もう会社にいないらしいよ』
「彼女も左遷……?」
 そこまではわからない、と芳美がため息交じりに答えた。
『だから涼子、気をつけてね。っていうか、逆恨みされてなければそれでいいんだけどさ。ちょっと気になっちゃって。不安にさせたならごめん』
「ううん。教えてくれてありがとう。いまのところ別に何もないから大丈夫だとは思うけど、気をつけるね」
『うん、そうして。心に留めてくれると、私も安心だから』
 今度会う約束をして通話を終えた。
(吉岡さんの会社の社長にバレたんだ。私は会社を辞めてるし、騒動の原因は吉岡さんなんだから根に持たれる筋合いはない。別れたきり会ってないんだし、連絡も来ないから大丈夫)
 それよりも、と涼子は別のことで頭を悩ませる。
 蒼真に抱かれながら思っていたことだ。梅木たちが話していた噂話は本当で、彼は婚約者がいることを自分に隠しているだけなのではないだろうか。あの時の梅木たちの会話からして、根も葉もない噂には聞こえなかった。
 涼子と蒼真の間にはなんの約束もない。相性のいい体を気に入ったから、そばにいて欲しいという存在。そしてそれは「彼の気が済むまで」という期間限定の関係なのだ。
 蒼真のもとから逃げられないようにこの部屋へ置き、彼の職場で働かせるなど、ひどい執着のようにも思える。けれど、涼子は蒼真に「好きだ」と言われたことはない。
(そして私も蒼真に恋をしているわけではないのだからと、この関係を割り切ろうとしていた。でも結局……彼のことを好きになってしまった)
 蒼真に好きだと伝えたところで困惑させるだけだろう。何を言っているのだ、と。
 涼子は窓際に歩いていき、カーテンの隙間から外を覗いた。
 都会の夜空は厳しい寒さで空気が澄んでいても、星が少ない。淡く光る星が涼子の心のように頼りなく瞬いていた。

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