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【4話】元カレ同期は諦めない~すました彼の冷めない欲情~

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「そんなことない」
「そう思ってるのは匡吾だけ。私がどれだけヤキモチ妬いたと思ってんの……」
 眞妃はお酒の勢いでぽろぽろと本音をこぼしていた。
「お前、酔ってるのか」
「うん……ふわふわして気持ちいい」
 ビールの次は甘いカクテル。でも眞妃は二杯でもう顔を赤くするほどだ。
「そんなに酒弱かったのかよ」
「そういえば匡吾とは飲んだことなかったね」
「つき合ってたの大学一年の頃だからな」
「あの頃の匡吾かっこよかったな~」
 匡吾と二人きりでいると昔のことをつい思い出してしまう。
 眞妃も匡吾にこっそり憧れていたこと。
 告白をされて驚いたこと。
 初めてのキスやそれ以上――。
 そこまで考えて、匡吾に見つめられていることに気づき現実に引き戻された。
 もう匡吾とは約十年前に別れた。匡吾と一緒にいて楽しかったけどそれ以上につらくて離れたことを忘れてはいけない。
「今はどう思ってんの」
「今は……怖い、って言われてるのはよく聞く」
「『眞妃は』どう思ってるんだよ」
 強い眼差しで見つめられて、眞妃は身体を固くする。この表情がいつも何を考えているかわからなくて、振り回されていた。でももう昔の自分ではない。
「……うーん別に……冷静だな、とか?」
 かっこいいとは思うけど、言ったら負けだと思った。
「あっそ」
「なにその態度。匡吾は? 私のことどう思ってた?」
 反撃とばかりに眞妃は口元を緩めながら匡吾に詰め寄る。こんなことで動揺をするような人だとは思っていないけれど、少しでもあの頃の自分ではないのだとアピールしたい。
「言わない」
「なんでよ!」
「言ったら調子乗りそうだし」
「ていうことは良いこと……?」
 楽しくなってきた。
「うるさい、アホ」
「なにそれひどい」
「グラス空いてる。次なに飲む」
「えーと……」
 眞妃はメニューの中からお酒を選ぼうかと思ったけれど理性が働く。これ以上酔ったらどんな失言をしてしまうかわからない。
「ウーロン茶にしておこうかな」
「俺はハイボール」
「まだ飲むの? 全然顔色変わらないね」
「いつものこと」
 注文して運ばれてきたハイボールを、どんどん飲み干していく。表情が変わらないうえにお酒に強いのか。
 これは勝てそうにない。

 気づけば店に入って四時間が経過していた。匡吾と二人きりで最初は不安だったけれどすっかり打ち解けていたことに自分でも驚く。
 すっかり酔いも醒めていた。
「おまたせ。そろそろ帰る? って匡吾?」
「……」
 お手洗いから戻ると、匡吾はグラスを持ったままうつむいていた。声をかけても反応がない。そっと顔を覗き込むと、目をつむっていた。
「ちょっと寝ないでよ」
 眞妃のほうが酔っていると思っていたら、いつの間にか匡吾のほうがダウンしていた。強いと思っていたけれど、さすがに飲みすぎたみたいだ。
「大丈夫? 気分は悪くない?」
「大丈夫。ちょっと酔っただけ」
「それなら終電無くなっちゃうから帰るよ」
「ああ……」
 返事をしながらも匡吾は動く気配がない。
 いつもあれだけしっかりしている匡吾の酔った姿は初めて見たので新鮮だ。でも帰れないのは困る。
「ほら、帰るよ!」
 匡吾の腕を引っ張ると、ようやく彼は立ち上がった。コートを着させて鞄を持たせる。なんとか歩けそうでほっとした。
「あ、お会計お願いします!」
「すでに頂戴しております。ありがとうございました」
「え……」
 こんなに潰れているのにいったいいつの間に払ってしまったのか。眞妃がお手洗いに行っている隙に? 寝ていたのに?
 疑問は残ったままだが、とりあえず匡吾をなんとかしないと。
 眞妃は匡吾を引きずるように店を出て、タクシーを捕まえ乗り込む。彼を送ってから自宅へ帰る算段だ。
「匡吾の家どこ?」
「……」
「ちょっと、寝ないで!」
 匡吾の腕を掴み身体を揺すっても、ガクガクと揺れるだけで起きる気配がない。
「お客さーん、どちらまで?」
 運転手のイラ立ちを隠せない声が眞妃を焦らせる。
「す、すみません」
 匡吾がどこに住んでいるかはわからないし、手近なホテルにいくのもどうかと思う。
 眞妃は仕方なく、自分の家の住所を告げた。

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