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【最終話】元カレ同期は諦めない~すました彼の冷めない欲情~

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「も、だめ……っ」
「眞妃、俺も」
 匡吾の動きは高みを昇るように、がつがつとした激しい律動になる。身体の気持ちよさもあるけれど、何よりあの匡吾がこれほどまでに求めてくれているのだということが、眞妃を限界まで高ぶらせる。
「眞妃、俺を見ろ」
 ぎらりとした鋭い瞳に射抜かれて、ぎりぎりのところで持ちこたえていた欲望が弾ける。
「――ああっ!」
 熱い眼差しを向けられながら、眞妃はびくびくと身体を震わせて息を詰めた。
「く……っ」
 少し遅れて、びくびくと、眞妃の中で匡吾の熱が弾ける。
「眞妃……好きだ」
 達したばかりの荒い呼吸のなか、匡吾の優しい声が落ちてくる。また耳元で囁くものだから、余韻の残った身体は小刻みに震えてしまう。
 私もと伝えたいのに、その前に匡吾の熱い唇が塞ぐので、言葉にできなかった。
 
 
「俺がいない間他の男にとられないか不安だ」
 ベッドの中で匡吾がぽつりとつぶやく。そんなことありえないのに、めずらしく不安がっているのがおかしい。それこそ眞妃のほうが不安だと思う。きれいで積極的な女性がいたらどうしよう、と。
「私だって同じだよ。……どれくらいの期間行くの?」
 一年ならまだいい。けれど三年とか、もしくは永住となると眞妃もいろいろと考えなければいけない。いずれ匡吾について行くか、とか。
「一ヵ月」
「……え?」
 さらりとした発言に目をまるくする。
「ただの長期出張だし」
 匡吾は当然のように言う。
「……てっきり異動するものだと……」
「そんなこと言ったか?」
「だって、社内メールにはそんなこと」
「異動とも書いてなかっただろ」
 匡吾がいたずらっぽく笑う。どうやら彼は眞妃が勘違いしていたのをわかっていたみたいだ。
「まあ、離れるって言えば眞妃がさっさと自覚するだろうと思ったからあえて詳しいことは話さなかったけどな」
「ひどい……」
「眞妃の気持ちはなんとなくわかってたけど、一応念押しのためだよ」
 匡吾が海外へ行くと言う前に、眞妃はすでに自分の気持ちを自覚していた。さすがの匡吾も計算ミスをしていたらしい。
「……意地が悪い!」
「効率がいいって言え」
「どこが効率がいいのよ……」
 効率が良いどころか、正反対だ。余計に悩まされたし時間がかかった。感傷に浸った最後のデートはなんだったのか。そんなことならもっとワガママ放題にすればよかった。
「でもそれならどうしてデスクまで片付けたの?」
 ただの出張なら自分のデスクをきれいに片付けなくてもいいはずだ。今の匡吾のデスクの横には段ボールが置いてあって、明らかに居なくなることを示唆していた。
「戻ってきたあと部署異動するから」
「えっ!?」
 眞妃はまた匡吾に驚かされる。
「経営企画に異動になるらしい。昇進ってやつか」
 だいぶ前に匡吾が経営企画部の人と話していたことが、現実になるわけだ。
「それは、よかったけど……教えてくれたっていいのに」
 眞妃は急に寂しさがこみあげてくる。海外行きが出張で安心したのに、帰ってきたら同じ部署で一緒に仕事ができないのは、残念だ。
「悪かったよ、そういう顔が見たくなくていつ言おうか迷ってた」
「……匡吾らしくないね」
 眞妃が弱々しく微笑むと、匡吾は眞妃の頭を撫でたあとベッドから降りてカバンの中から小さな箱を取り出した。ぼんやり眺めている間にベッドに戻ってきて、眞妃の手のひらに乗せる。
「え」
 今日一緒にショップに行った眞妃の好きなブランドの、欲しいと眺めていた指輪だった。ピンクゴールドで、小さな石が輝いている。目の前にあるのが信じられなくて、匡吾と交互に見やる。
「指輪とか重いか? お前が欲しがってただけだから深い意味はない、と言いたいけど……多少はある」
 照れながら匡吾は眞妃の指に指輪をはめる。迷いながらも左手の薬指にはめてくれた。サイズはぴったりだった。眞妃は何も言えずに呆然として、視界が揺らいでいく。
「一ヵ月だけど、これつけて男避けしておけ」
「……っそんなの、誰も来ないよ」
 眞妃は我慢しきれない涙をぽろぽろとこぼしていた。花やネックレスだけでも驚いたのに、指輪まで用意するなんて。感動しすぎてうまく言葉が出てこない。
 あのクールだと思っていた匡吾がここまでしてくれるのはあの頃から考えると信じられない。
「一応これ前置きっていうかそういう感じだから」
「……気が早い……」
 匡吾が眞妃の涙にキスをする。
「効率がいいって言えよ」
 その言葉が正しいのかはもうわからないけれど、眞妃は、喜びを噛みしめながら、泣いて、笑った。

〈了〉

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