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【21話】元カレ同期は諦めない~すました彼の冷めない欲情~

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 エレベーターの時を繰り返さないように、匡吾の真似をして冷静さを装った。
「やっぱり私、仕事に集中したい。悔しいけど、匡吾みたいに器用に両立はできないみたい」
 匡吾の目を見てまっすぐ伝える。今自分がやるべきことは仕事なのだと、改めて気づかされた。匡吾のせいにするわけではないけれど、最近の眞妃は浮ついていた。彼へ気持ちが揺れ、思考を奪われていたのは事実だ。
「それに、つき合ってもどうせまた匡吾の考えることわからなくなって、勝手に不安になって、だめになるに決まってる」
「好きだって言っても?」
 匡吾の手が、眞妃の頬に添えられ、優しく撫でる。
 気持ちがよくてこの手を掴みたいと思ってしまう心を必死につなぎとめる。
「……そんなの、この先もずっとかわからない」
 大学時代だって匡吾から告白してきたのに、あんなことになってしまった。
「逃げるなよ。逃げたから大学の時あんなことになったんだろ」
「でも」
 勇気がない。大人になって、昔より傷つくことが怖くなった気がする。今また同じことになったら今度こそ立ち直れない。
 匡吾の手はゆっくり頬を撫で、離れていった。深くため息を吐く。
「仕方ないな」
 彼の承諾するようなセリフに、一瞬焦る。これで今度こそ、匡吾との関係は終わり、ただの仕事仲間になる。寂しい気がするけれど、眞妃が望んだことなのだから仕方ない。
「不器用なお前のために、今のプロジェクトが終わるまでは待ってやる。上層部へ通ったら、ハッキリさせるから」
「……え……」
 けれど匡吾の口から発せられたのは、「終わりの話」ではなかった。眞妃が呆気にとられ匡吾を見つめていたらまた彼の手が眞妃の頬を撫でる。
「譲歩してやる。そのほうがお前にとっては効率的なんだろ?」
 思わぬ提案を理解した眞妃は、ふ、と微笑みを浮かべる。
「……偉そう」
「それくらい許せよ」
 まだ諦めてくれないんだと、なぜか安心している自分がいた。
「匡吾、ありがとう」
 微笑みかけると彼はわずかに目をそらす。まっすぐで突き刺すような視線がそらされるのは今までになかった。
「仕事が終わってもダメだったら、ちゃんと諦めるから安心しろ」
 匡吾がそんなことを言うとは思わなかったので、驚きのあまり横顔を凝視してしまった。彼は切なげな表情を見せ、もう一度眞妃へと向き直る。
「最後にキスしたい」
 頬を撫でている匡吾の指が眞妃の唇をなぞる。指先の感触に身体がぞくりとした。ここは会議室だけど迷う前に自然と頷いていた。
 匡吾が顔を傾けながらゆっくり近づいて、唇が優しく重なった。
「ン……」
 啄むように何度も繰り返されるキスに眞妃は頭の中がとろんと蕩けていく。
「その目、やめろよ」
「え……? んっ……ふぁ」
 軽く唇を合わせるだけのキスから深くなっていく。口の中にぬるついた舌が入ってきて、眞妃の舌と絡める。眞妃も戸惑いながら彼を求めるように舌を動かしていた。匡吾のキスは気持ちがよくて、ここがどこだか忘れてしまうほどだった。
 でも少ししたら匡吾のほうから唇を離す。
「はい、ここまで」
「……」
 身体が微妙に疼いていることを、きっと匡吾は気づいているはずだ。
「言っておくけど俺のほうが我慢してるからな」
「……はい」
 匡吾と何回か身体を重ねてしまったせいで、悔しいけれど眞妃の身体はすぐに反応するようになってしまった。
「仕事がんばれよ」
「はい。サポートよろしくお願いします」
「サポートばかりに頼るなよ。まとめて指示するのがお前の仕事だ」
「わかってます」
 力強くうなずくと、匡吾の大きな手が頭を撫でた。
 同期のくせに偉そうに、と数週間前だったら思っていただろう。でも今は頼りになる仲間であり同期。他の感情は一度忘れることにした。
 
 
 匡吾の提案のおかげで、眞妃は仕事に集中できるようになった。
 匡吾が待つと言ってくれたおかげで、彼との関係を悩まなくて済んだおかげだ。さすが彼の提案は成功らしい。
 眞妃は毎日社内を走り回っていた。
 デザインチームへは開発開始までとりあえず保留として、開発チームとの会議で忙しい。なにしろ一週間で新しいアイディアを出さなければいけない。機能はこのままで、とゴリ押しをしても上層部を納得させることはできないと匡吾と相談した結果だ。
 機能面での他のアイディアも検討しつつ、企画書の修正に取り掛かった。
 前回提出した企画書を元に必要な個所を修正していくだけなのでそれほど時間はかからないが、眞妃には他にやりたいことがあり、前倒しで作業をするため、残業の日々だった。

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