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【2話】元カレ同期は諦めない~すました彼の冷めない欲情~

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 朝一の会議ですっかり疲弊してしまい、ようやく来た昼休みに安堵する。今日は外に食べに行く元気もないので、社員食堂で済ませることにした。オフィスビルの三階にある食堂は広々としているしメニューも豊富だけど、ついつい外に出たくなってしまって、めったに利用することがない。
 空いている席を探していたら、匡吾を見かけた。避ける前に目が合ってしまう。
「……あ」
 相変わらず無表情。その表情が機嫌が悪いわけではないと知ってからはなんとも思わなくなったけれど。
「お疲れ様でーす……」
「……っす」
 眞妃は挨拶だけして匡吾から視線をそらし、他のテーブルを探した。特に何も言われなくてほっとする。
 少し離れた席に座り、思う存分大きくため息を吐いた。
 頭の中で会議の反省をしながらハンバーグを頬張る。
 確かに新商品開発がうまくいって調子に乗っていたところはあるが、どうしたら顧客の意見を尊重できるか考えていた。数字は確かに大事だけど、それよりも大事なものがあるのに。
 眞妃はインテリアブランドS.N.Oの商品開発部に所属して六年が経とうとしている。もう中堅の域だ。開発担当を任されることも多くなってきた今、一番仕事が楽しいと感じている。
 だからこそ、会議ではいつも本気ゆえに疲れてしまう。
 結局匡吾の案が採用されてしまったけれど、次はどう攻めていこうかと頭の中でぐるぐる考えながらハンバーグを口に放り込む。
「鳴海」
「っ、は、はい!」
 突然、背後から低い声に名前を呼ばれて振り返ると、匡吾がトレイを持って立っていた。
「夕方からミーティング」
 口の中に入っていたハンバーグを慌てて飲み込んだ。
「な、なんの?」
「部長からのメール見てないのか? 担当俺たちになったから、夕方ミーティング設定した。既存商品の目星つけておけよ」
「……わかった」
 匡吾はそれだけ言って立ち去った。
 眞妃は高鳴った心臓を抑えるように胸に手を当てた。
 まったく心臓に悪い。
 彼がただの無表情で仕事ができる同期だったらこんなに動揺しない。
『元カレ』が職場にいるというのは、なんともやりづらい。
 匡吾とは大学に入りたての頃、つき合っていた。
 大好きで仕方がなく、ファーストキスも、初めても彼に捧げた。でも一度身体を重ねてから、すぐに自然消滅した。
 匡吾の無表情さや性格は昔から変わらず、若かった眞妃はそんな彼の言動に振り回され、好かれているのかわからなくなり結局苦しくなって自分から離れてしまった。でもその選択は間違っていなかったと思う。
 だってこんなに意見が食い違う二人だ。あの時別れなくてもいつかは別れていたと思う。
 でもまさか、入社後に同じ部署で再会するなんて想像もしていなかった。
 匡吾に負けたくないのは、昔つき合っていたことも理由のひとつだ。
 
 
 夕方からの会議は眞妃と匡吾と部長の三人でのミーティングだ。
「担当は鳴海、責任者は柏木で進めることにした。よろしく」
「……はい、がんばります」
 担当を持つというのはうれしいことなのに、匡吾と一緒となると話は別だ。こんなに違う二人でやっていけるのかと不安になる。
「とりあえず検討結果を発表してくれるか?」
「は、はい」
 部長に言われて、眞妃は午後一で急いで作成したファイルを展開する。
 既存の商品改良に力を入れるということで眞妃が選んだのは一番売上の悪い照明器具だ。背の高いコンセント式の照明は昨今需要がないのか、廃番になりかけているというのでどうにか改善したいと考えた。
 新商品を考える時とはまた違った楽しさがある。
「女性の顧客が多いので女性が好まれるデザインに変更しようかと考えています」
「……なるほど、でも売上も悪い商品だし、弱いな。デザインを変えるだけでは上層部には出せない」
「……そうですか……」
 急いで考えたため大した案も出なかった。
 今とっさに考えて出てくるものでもないけれど眞妃がどうしようか迷っていると、匡吾が口を開いた。
「……俺は鳴海の意見はいいと思います。ですが弱いのは確かなので、デザイン面で大きく変更を加えることと、コードレスにしてみる等利便性を追加するのも良いかと」
「確かにそれもいいな。デザイン案を数点、それから追加機能を考えてくれ。その結果で上層部に確認しよう」
「はい。鳴海もそれでいいか?」
「は、はい」

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