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【21話】溺甘弁護士の真摯なプロポーズ~三年越しの約束を、もう一度~

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 軽々と私を抱いて寝室に向かう旭の首に腕を回しながら、情けない声を出す。
「シャワー浴びなくていいの?」
 返事はなく、寝室に入った旭は私をベッドに横にし、すぐさま覆い被さって唇にキスを落とした。
 先ほどの触れるだけの口づけとは違い、熱情を注ぎ込まれているかのような激しいキスに頭がぼうっとする。
 唇の隙間から舌が挿し込まれ、口内を撫で回されて唾液が顎まで伝った。
「んぅ……」
 自分のものとは思えない甘ったるい声が鼓膜を震わせ、羞恥心を煽られる。
 私のどの部分が感じやすいか熟知している旭の手が肌を滑り、翻弄されて快楽が駆け巡った身体が反り返った。
「あっ……」
 抑えきれない声がこぼれる度に、旭は熱を孕んだ瞳で私を真っ直ぐ見下ろす。
 いつもの優しい表情はどこにもなく、本能で私を求める姿に胸が焼け焦げそうなほど熱くなる。
「旭……好き……」
「俺も莉奈が好きだ」
 ようやく想いを吐き出した私の言葉を旭は自身の唇で塞ぐ。ありがとうと言われているようで胸が震える。
 ふたりで一緒に深い海に沈んでいくような感覚を覚え、目を瞑り身体を震わせた。
 このままずっと離さないでほしい。
 互いの体温が溶け合い、まともな思考が奪われていくなかでそんなことを思った――。
 
 仕事に邁進して、充実した日々を送っていたらあっという間に月日は流れ、待ちに待った旭の妹である千沙都ちゃんの結婚式の日を迎えた。
 深いネイビーのドレスに身を包み、自分の結婚式に向けて伸ばしている髪をアップスタイルにした私は、親族一同と行動を共にすることとなった。
 まだ入籍を済ませていないのに、と尻込みをした私の気持ちを楽にさせてくれたのは他でもない旭のご両親。
 もうすぐ娘になるのだからと優しく私を迎え入れてくれて、危うく千沙都ちゃんと湊さんが入場する前に泣いてしまうところだった。
 ふたりの挙式が執り行われたのは、広さと高さ共にスケールを誇る大空間で、降り注ぐように響き渡る聖歌隊やトランペットの生演奏は迫力があった。
 式は滞りなく進み、新郎新婦との写真撮影を終えた参列者たちは、可憐な花が咲き誇る広大なガーデンに場所を移した。
 披露宴が始まるまでの間ここで過ごすらしい。水色に澄んだ秋の空には薄い雲が流れていて、天気に恵まれてよかったと清々しい空気を胸に送り込む。
 ガーデンに移ってすぐスタッフに用意してもらったシャンパングラスを片手に、旭と白いベンチに並んで腰かけた。
「千沙都ちゃん綺麗だったね」
 幸せのお裾分けをもらった参列者たちの表情は、皆穏やかで楽しそうに見えた。思い思いに話に花を咲かせる人々を眺めながら、飲み慣れていないシャンパンを喉に流し込む。
 旭も同じようにガーデンの風景を静観していたが、ゆっくりと立ち上がってグラスを近くにあるテーブルに置いた。中身は半分以上残っている。
 トイレかな、と首を傾げた私の前に旭は立ち、手からグラスを抜き取ってそれもテーブルに置く。
「どうしたの?」
「タイミングとして、今が正しいのか分からないけど」
 いつになく真面目な顔をしていて、緊張感がこちらにも伝わってきた。反射的に姿勢を正して旭を見上げる。
 旭はスーツのポケットから手のひらサイズの箱を取り出して、私の足元にひざまづいた。
「日比谷莉奈さん。俺と結婚してください」
 目の前に差し出された箱の中心には、キラキラと輝く美しい指輪がある。
「えっ……これ……」
「婚約指輪、渡していなかっただろう。最終合格発表後、改めてプロポーズしようと考えていたんだ。でも、俺の婚約者として親族席にいる莉奈の指に、なにもないのがどうしても嫌で。今すぐ指輪をはめてほしい。……俺のわがまま聞いてもらえないか」
 照れたような困ったような、なんとも言えない表情でいる旭を呆然と見つめた。
 突然婚約指輪を差し出されたことにもちろん驚いている。だがそれ以上に、目の前にある指輪の存在に混乱したのだ。
 というのも三年前のプロポーズのとき、彼の手には今と同じように指輪の箱が握られていた。
 せっかく用意してくれたものを受け取らないのは心苦しかったので、指輪のデザインは鮮明に記憶している。
 正式に婚約をしたら、三年越しにその指輪をもらえるだろうと楽しみにしていた。けれど目の前にある指輪はあの日のものではない。
「違う指輪……?」
 半信半疑でいると、旭は「ああ」とうなずく。

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