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【18話】溺甘弁護士の真摯なプロポーズ~三年越しの約束を、もう一度~

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「もしかしてわざと見せつけた?」
 旭は質問には答えず、フッと空気を震わすように笑った。
「俺が莉奈にしか興味がないのは一目瞭然なのに。前に文乃ちゃんに、俺の全身から莉奈を好きな想いが漏れ出ているって言われたよ。隠していないから、漏れているのはあたり前なんだけど」
 聞いているこっちが恥ずかしくなる話を、旭はまるで天気の話をしているかのように口にする。
「文乃ちゃん、いつの間にそんな話を……」
「俺たちが夫婦になったらさすがに行動を慎むだろうけど、もし変わらないようだったら、加賀美さんには俺の秘書から外れてもらうから」
「そこまでしなくても」
「本当に? 自分の目の届かないところでなにをされているか、不安になっていたんじゃないか?」
「……お見通しなのに、これまで知らんぷりしていたんだね」
「いや、加賀美さんには、莉奈といるときは電話をかけてこないでほしいと伝えていたし、距離が近いのも誤解されるから遠慮してほしいとお願いしていた」
 それであの態度? 全然分かってもらえてないじゃない……。
「八年も付き合っているのにいつまで経ってもプロポーズしないから、俺が莉奈と結婚するつもりがないと勘違いしていたんだろう」
 とっくの昔にプロポーズしているのに、と続けて旭は苦笑いをこぼす。
「私が招いた結果なんだね……」
 どっと疲れが押し寄せて肩を落とした。
「ずっとひとりで悩んでいたんだよな。苦しませて悪かった」
 眉根を寄せて厳しい表情を作った旭の腕をポンッと叩く。
「だから旭のせいじゃないって。言われた通り、私がひとりで勝手に抱え込んで悩んでいたんだから」
「急には変えられないかもしれないけど、夫婦になるんだし、これからは些細な悩みでもいいから打ち明けてほしい」
 そう言う旭は、すべてを受け入れてなにもかも許すような優しい笑顔を浮かべていた。
「分かった。これからはそうする」
 どこまでも甘やかされているなあと、情けなく笑ってしまう。けれど弱みを見せてほしいと言ってくれる人がそばにいるのは、とても居心地がいい。
「このあとまた事務所に戻らないといけないんだよね?」
「今日の夕方しか時間が取れない依頼人がいるんだ」
「そっか。せっかく時間を作ってくれたのに、トラブルに巻き込んで貴重な時間を使わせてごめん」
「いいよそんなの。それより俺は今日も莉奈に触れられないのが辛い」
「……へ? 手を繋いだり、抱きしめたりしてるよ?」
「いい大人がみなまで言わなくても分かるだろう」
 きまりの悪い顔をして旭はため息をつく。
 言わんとすることを理解して、顔に火がついたかのように熱くなった。
「旭でもそんなふうに思ったりするんだ」
「あたり前だろう。これまで我慢してきた分、一緒に暮らし始めたら覚悟しておいて」
 珍しく意地悪い顔をして笑った旭に、どうしようもなく胸がときめいて苦しくなる。覚悟もなにも私はそれを望んでいる。
「早く一緒に住みたい」
 ひとり言のつもりでボソッと口のなかでつぶやくと、旭がピタリと動きを止め、それから目にもとまらぬ速さで私の唇をさらった。
 触れるだけのキスの余韻はすぐに消えてしまい、キスをされたのが錯覚だったのかと思うほど。
「ただでさえ莉奈からのプロポーズがうれしくて浮かれているんだから、これ以上煽らないでほしい」
「え、あっ……うん」
 いつも冷静沈着で、感情に流されたりするイメージからは程遠い旭だからこそ、私が振り回しているという事実に驚きを隠せなかった。
 私、ちゃんと愛されているんだ。
 じわじわと実感が湧いて、顔がニヤつくのを抑えきれない。
 旭も幸せそうな笑顔を浮かべながら私の頬を指先でそっと撫でる。
 文乃ちゃんが話していたという、『莉奈を好きな気持ちが漏れ出ている』というのはこういう仕草からきているのだろう。温かな液体で胸が満たされていくような幸福感に包まれて、私に触れる指に手を添えた。

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