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【16話】美貌の教授は一途な司書に恋を甘く教える

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キャンパスのスキャンダル

 桂川先生と過ごした週末が明け、また月曜日がやってきた。
 いつものように定時よりも三十分ほど早くデスクに到着すると、すぐに内線で高柳先生に呼び出された。
 ノックをして館長室に入室すると、見たこともないような険しい表情で高柳先生が席から立ち上がる。
 そのただならぬ様子に、嫌な予感が脳裏を過ぎった。
 何かあったんだろうか?
 不安に駆られて先生を見つめると、高柳先生はいつもの朗らかさが微塵も感じられない、重苦しい表情で口を開いた。
「実はちょっと困ったことになってるんだ」
「あの、何かあったんでしょうか」
 高柳先生はコホンと咳払いをし、言いにくそうに言葉を続ける。
「実は学長に匿名のメールが送られてきてね。そのメールに画像が添付されていたんだが……」
 そう言いながらパソコンの画面をクリックし、私に見るように促す。
 困惑しながらデスクに近寄り、液晶画面を確認した瞬間、全身から血の気が引いていく。
 それは私と桂川先生を撮ったものだった。
 ふたりよりそうもの、先生が私の顔に手を触れているもの、そして……キスをしているもの。
 何枚かある画像には、私たちのあの浜辺での一部始終が克明に収められている。
 あまりの出来事に体が震え、指先が冷たくなった。
「学長や教務部長、それに……一部の学生の間にも出回っているらしい」
「そんな……」
 あの場面を誰かに見られていたなんて。
 だけどいったい誰がこんなことを?
「桂川先生も君も独身だし、本来こんなプライバシーを人前に晒すなんて行為はやった方が罰せられるべきだと僕は思う。だけど君は元々桂川先生の教え子だし、まだここへ来て三年にも満たない若い職員だ。それに学生の間にこんな画像が出回っていることも、少し問題になっている」
 高柳先生は苦悩に満ちた表情で私を見つめている。どうしたらいいのか分からず、私は言葉を失った。
「単刀直入に聞くけど、この行為は合意のもとに行われたこと?」
「合意……?」
「この画像を見る限りでは、桂川先生が強引に君に……という風にも受け取れる」
 そんな。こんな写真一枚で、桂川先生が疑われてしまうなんて。
 それまでの動揺が吹き飛び、なんとか桂川先生の嫌疑を晴らさなければと、体の震えが止まった。
「違います。私……桂川先生がずっと好きでした。でもそれは一方的な片思いで、先生と親しくさせて頂くようになったのは、ほんの数日前のことです。この画像のようなことも、この時が初めてのことで」
 必死に訴える私に、高柳先生の方が何故か赤くなる。
「そうだったんだね。いやぁ、僕としては、桂川先生を支える女性が現れたことは喜ばしいことだし、それが山本さんならなお嬉しいよ、本音として。でもなぁ、これ、学長はともかく、理事長の元にも送られたらしくて……」
「本当ですか!?」
「ああ。とんだスキャンダルだと、理事長は大層ご立腹だそうだ。何しろ桂川先生は、うちの看板教授だからね」
 確かに桂川先生はマスコミにも時々登場する、この大学の広告塔だ。もしもこの画像がマスコミの手に渡ったらただでは済まないだろう。桂川先生が今まで積み上げてきた信用もキャリアも、何もかもが台なしになってしまう。

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